スペインのファストファッション業界においてZARA以上に日本市場に力を入れている企業がある。1984年にスイス人トーマス・メイヤーによってバルセロナで設立されたDESIGUAL(デシグアル)である。創業者はスイス人といっても、ドイツで生まれ、3歳の時からバルセロナに在住しているからスペイン人といった方が正確かもしれない。
彼は現在DESIGUALの99%の株を持ち、資産は15億ユーロ(1770億円)でカタルーニャの富豪のひとりだ。(参照:elconfidencial.com)
DESIGUALのアパレルの特徴は色彩豊かで幾何学模様やパッチワークを取り入れたデザインを基本にレパートリーを広げている。日本市場では、その派手さをそのまま取り入れると日本の消費者には強烈過ぎて受け入れられないと感じているのか、色彩と模様を少し控え目なデザインにしている。(参照:fashion-press.net)
DESIGUALはアジアでの成長に強い期待を寄せており、その中でも日本市場には最大の関心を払っている。現在の日本市場には34店舗を構えている。筆者が最初に同社と接触を持ったころは、まだ日本では小規模な輸入代理店を通して市場に導入していた。しかし、その頃から将来的には直営店を開設するというプランをもっていた。
ところが、DESIGUAL全体の業績は昨年も成長がみられなかった。昨年の売上実績はまだ正式には発表されていないが、オーナーのトーマス・メイヤーが「市場とのコネクションを失ってしまった」と述べて、昨年も業績が不振であったことを仄めかした。
(参照:cincodias.elpais.com)
DESIGUALは2014年の9億6350万ユーロ(1137億円)をピークに売上が落ちている。2019年の売上額が近く発表されるが、凡そ6億ユーロ(708億円)と伝えられている。前年の2018年は6億5460万ユーロ(772億円)の売上で、2017年と比較して14%減少した。ということで、2016年から2018年まで27%の売上後退となっている。また、純利益も2014年が1億3000万ユーロ(153億円)であったのが、2018年には僅か330万ユーロ(3億9000万円)しか挙げていない。メリットは負債を抱えていないということだ。
(参照:elpais.com:elconfidencial.com)
店舗は90か国に500店舗余り構え、従業員は3700名。マルチショップやデパートでも販売されている。それらを総合すると世界の販売拠点は2万点弱となっている。ネット販売は現在売上の14%を占めている。
尚、直営店に関して3000万ユーロ(35億4000万円)を投入して年内に90-100店舗の店舗改装を予定しているそうだ。この2-3年で全ての店舗の改装を行う予定だという。「負債がないので、銀行からの融資も必要ない」とオーナーは語った。
(参照:cincodias.elpais.com)
DESIGUALの業績不振の重要な要因は顧客の年齢層が高いということなのである。同社が急成長を始めた1990年代後半からの顧客がそのまま現在も顧客の中心となっているが、年齢がすでに40歳を超えて47-48歳となっている。この年齢層は購買力はもっているが、現在市場を動かしているのは20代から30代の若者である。この年代層の顧客をDESIGUALは固定客としてもっていないのである。この年代層を征服しないことには躍進はない。それには特に価格の問題がある。
価格を現在のそれよりも安価にする必要がある。ところが、安価な価格での市場競争となるとZARAを始めPRIMARKといった強敵と顧客の獲得競争となって、そこで販売を伸ばすのは容易ではない。
このギャップをDESIGUALは十分に承知しているが、商品開発からデザインを始め今までその変革が遅れているということなのである。
このような事情を抱えているDESIGUALの解決策の一つとして挙げられているのが同じくバルセロナで生まれたファストファッションのMANGOと合併するのがベターだという意見の業界専門家もいる。MANGOも同様に売上不振が続いている。両社が一緒になってダイナミックに市場開発をしていくことは可能である。ということで、同じカタラン企業ということで、将来的には両社の合併の可能性はある。
スペインのファストファッションの業界について言えば、安価でモデルチェンジのスピードが非常に速いZARAと最近不振から脱出しつつあるH&Mに対して激安のPRIMARKと大きく二分される印象を与えている。DESIGUALもMANGOも特に価格面ではリーダーシップを取れる体制になっていない。
また、DESIGUALのサプライソースの50%は中国からということでコロナウイルスの影響で今後の商品の入荷に問題が深刻になる可能性がある。と当時に工場を中国以外の近隣諸国にシフトすることが検討されている。