今国会に提出されておりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出)について、本日衆議院本会議において全会一致で可決され、参議院に回付されました。今国会での成立は困難かも…と少しあきらめかけておりましたが、なんとか成立する見込みです。
産経ニュースによりますと、附帯決議として「内部通報の記録作成や保管など後に検証できる体制整備の検討など8項目を政府に求めた」そうです。事業者の内部統制システムの一環として、(従業員300名以上の事業者に対しては)内部通報制度の整備義務が法制化されますが、その整備義務の内容についてはおそらく施行日の6カ月前までには(政府から)指針として示されるはずです。その指針として示される骨子が附帯決議で明らかになっているのかもしれません。なお、事業者が整備義務を尽くしていたかどうか、という点は、様々な法律効果や裁判上の利益(不利益)と結びつきますので、改正法施行日(公布日から2年以内)前に内部統制システムの整備が不可欠です。
また、原案は消費者問題委員会の段階で一部修正されていたようで、
修正案は、施行後3年をめどに検討する事項として「裁判手続きにおける請求の取り扱い」も盛り込んだ。裁判となった場合に、立証責任を法人側に負わせることを念頭に置いている。
とのこと。つまり、公益通報者が通報によって会社から不利益処分を受けたと(裁判で)主張する場合、通報行為と不利益取り扱いの因果関係については通報者側が負担するのが原則ですが、この立証責任の負担を会社側に転換する、ということです。2010年の拙著、および消費者庁の委員会等で、私がずっと改正すべきと主張してきた点が、ようやく本格的に検討課題に上るようで、これは公益通報者保護制度の拡充、ひいては企業のコンプライアンス経営の推進にとって大きな前進です。
衆議院・参議院のHPで内容が判明次第、もう少しエントリーを補足したいと思います。とりいそぎ速報版のみ。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。