私権とは、私人としての利益や関係について規定した法律(私法)にある、国民相互間の権利のことです。
例えば、民法や商法などで認められている権利のことで、財産権や人格権などがそれに当たります。私権に対して、例えば参政権など、公法における公権という概念もあります。
私権制限は私権を制限するということですから、とても重たいことです。
例えば、刑事罰が確定して服役するということになれば、移動の自由は制限され、刑務所に強制的に入ることになります。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、新型インフルエンザ特別措置法に基づいて、政府は緊急事態宣言を発し、都道府県知事によって、外出自粛や学校の休校施設の利用制限などの要請や指示が出されました。
これらには強制力がないので、厳しい私権制限とは言えませんが、仮に外出禁止という命令が出され、罰則などがあれば、厳しい私権制限ということになります。諸外国では、緊急時に厳しい私権制限をする国があります。新型コロナウイルスへの対応として、ドイツでは感染症保護法で商店への閉鎖が命じられ、イタリアでは憲法で公衆衛生上の理由がある場合は移動を制限でき、フランスでは従来からあった法律よりも厳しい衛生緊急事態法を成立させて、外出制限をしました。アメリカでは州ごとに対策法が定められています。これらご紹介した諸外国では、いずれも罰則や罰金があります。
我が国では、緊急事態宣言後、都道府県知事から施設利用制限の要請や指示が出されたにもかかわらず、パチンコ店が営業を継続していることが大きな社会問題となりました。罰則などはありませんから、営業することは違法ではありません。
一方で、緊急時には、国や地方が公共の福祉を守るために、明確に私権制限をした方がいいのではないかという議論があります。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。