東京都知事選(5日投開票)が終盤戦に入るとともに、永田町ではにわかに“解散風”が吹き始め、知事選後の政局をにらんだ動きがかまびすしくなっている。
ここ数日、安倍首相と麻生副総理兼財務相との会談を繰り返し、さらに麻生氏が公明党の斉藤幹事長に早期解散の意見をぶつけたと報じられたことで、政界はすっかり秋の決戦に向けた布石づくりを本格化させている。
そうした中で国民民主党の前原誠司氏が、都知事選に“参戦”した。前原氏は3日昼、新宿と池袋の2か所で、日本維新の会推薦の小野泰輔氏の応援演説に入った。小野氏は無所属だが、この選挙戦で維新以外の国会議員から応援を受けるのは初めてということもあり、政局的な意味合いから注目されている
国民民主党は都知事選に自主投票の方針で、玉木代表は小池氏に近く、逆に小沢一郎氏や原口一博氏は宇都宮健児氏の応援に入るなど、それぞれが好きに動いているが、支援母体の連合は小池氏支援を決定。そのなかで前原氏は独自の動きに踏み出した格好だ。
前原氏は、先ごろ地方分権の勉強会をともに設立した維新の馬場幹事長からの応援依頼に応えたという。前原氏は、松下政経塾時代、小野氏が副知事として支えた熊本県の蒲島郁夫知事が政治学者だったときに指導を受けた縁があるという。
前原氏と小池氏といえば、2017年の解散総選挙の野党再編劇を巡る因縁を誰もが思い浮かべるところだ。
当時、都議選に大勝して絶頂だった小池氏が国政進出の動きを強めると、当時民進党の代表だった前原氏は党を解党し、小池新党への合流を決断した。ところが小池氏が民進党左派系議員に対して「排除する」と発言。これが大炎上して、新党「希望の党」はあえなく失速して絶望のどん底へ。衆院選で惨敗し、リベラル系野党は空中分解。前原氏も不遇の時期を過ごしてきた。
演説後のぶら下がりで小池氏への思いを尋ねられた前原氏。小池氏の都政について「この4年間はオリンピック・パラリンピックの問題や新型コロナウイルスのことで大変だったとはわかる」としながらも、記者の一人から「小池さんが2期目を務めることがふさわしいか」と尋ねられると、「こうやって応援しているからには小野泰輔さんには公約を実現するためにそのポジション(知事)に立ってもらいたい」と反対姿勢を明言した。
そして報道陣が集まった理由の一つは、野党再編の行方との関連だ。前原氏は、国民民主党と立憲民主党の合流に反対の立場だが、「有権者は数合わせにうんざりしている。何を日本の問題点と考えて何をやるために力を合わせるのか、順序を間違えてはいけない」と改めて批判的な見解を示した。
その上で前原氏は、馬場氏と立ち上げた勉強会については「純粋な勉強会」としながらも「こういう社会像をというのを共有していて、選挙互助会でやるものではない」と意味ありげに語った。
秋にも予想される解散総選挙に向け、野党の再編も取り沙汰される中、前原氏ら野党の保守系議員の動向がどうなるのか。今回の都知事選で前原氏が維新推薦候補を応援したことが、今後の「布石」になるのか注目される。