「頑張りすぎずもっと楽に生きていい」は逆こそ正しい

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

「頑張りすぎるな。もっと楽に生きなさい」、このセリフを最近、あちこちで見かけるようになった。言わんとする意図はよく理解できるものの、このセリフには決定的な重要ポイントが抜け落ちている。そのため、自己都合的な解釈をしてしまうと、ミスリードしかねない危険性をはらんでいる。

筆者は「将来的に楽に生きるためには、今は頑張るべき」という逆の考えを持っている。この思想には昭和レトロ感が漂うと感じた人も少なくないはずだ。だが、表層的なことをいうつもりはない。今回の提言には、資本主義社会の不文律に近い性質があると認識している。すなわち、「今日頑張ったものにのみ、楽な明日がやってくる」ということだ。筆者の体験談を交えて取り上げたい。

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頑張らない人の末路

筆者は義務教育、フリーター時代は典型的な「頑張らない人」であった。中学・高校は不登校であったが、クラスメートにも自分と同じ匂いのする「頑張らない人」が何人もいた。

中学時代に「学校がすべてじゃない!」と言っていたO氏とは仲が良かった。O氏は中卒で塗装の仕事に就職し、10代で結婚をした。ある日、市の花火大会で暴力事件を起こして牢屋に入って離婚、苦労していると風のうわさで聞いた。自分も中学時代は頑張らなかったため、名前を書けば全員合格出来てしまう工業高校に進学に漂着した。

高校時代は、中学時代以上に「頑張っているクラスメート」を見つけることが難しくなった。ある時、問題を起こした生徒B氏を引き取るために、親が迎えに来るということがあった。B氏の親は分かりやすくヤンキーのような出で立ちをしており、強く酒と煙草の入り混じった匂いを発していた。生徒であるB氏がふらつく親を介抱して出ていった。その後B氏は退学した。自分はここでも頑張らなかったため、高卒後にニートになった。

その後は5年間、フラフラ過ごしていたが心のどこかで天からチャンスが舞い降りるのをじっと待ち続けていた。だが、頑張らなかった自分は何も得ることはなく、月日は飛ぶように過ぎていった。23歳で高熱を出した日の夜、遠のく意識の中で「頑張らないと人生は詰む」という天啓を突然に受けた感覚を得た。これまでの人生で何も頑張らず、斜に構えた人を数多く見てきたが、結局どの人物も辿る末路は自分の希望するものではなかったことを理解した。そして自分もまぎれもなく同じ立場であり、このまま何もしなければ待ち受ける結果は想像しうるものであるとその時に初めてわかったのだ。そして今頑張らなければ、将来もっと頑張らないといけないことになると悟った。

今すぐ頑張ろうと一発奮起して独学で勉強、米国大学留学を経て会社員、起業へとつながっていった。自分は成功したなどと、手前味噌でおこがましい主張をするつもりはない。だが少なくとも過去の自分と比較すると、人生が好転したと感じた。それは頑張らない生き方をやめたからだと自己内観している。

今楽に生きているのは頑張った人だけ

世の中には一見すると「頑張らなくても楽に生きている」ように見える人物がいる。だが、こうした人物たちは過去に努力をしている結果なのだ。

たとえば人気YouTutberは「楽に生きてる」と思われがちだ。彼らは1つの動画を投稿するだけで、あっという間に100万人以上の視聴者に伝わる影響力を持っていたりする。駆け出しのYouTutberたちと比べると、動画制作の労力は同じでも結果は文字通り何万倍も違ってくる。だが、人気YouTutberとて現在の影響力を持つために、頑張った時期があったはずだ。彼らも一夜にして作られたわけではなく、何年も改善とリサーチを積み上げた結果として市場から支持される存在となった。そして傍からは見えづらいが、こうした人達は影響力を維持、高めるために今も頑張っている。

これは勉強などでも同じで、たとえば英語学習初心者の人は1つの単語を覚えるのも大変な想いをする。だが、上級者は関連語、反義語、接頭語などの蓄積した知識が味方になるために、未知の英単語を暗記するのもその労力は初心者とは比べ物にならないほど楽になる。だが、最初は頑張る必要がある。そして、この考えは投資でも同じ理屈が通る。軍資金が1万円と1億円とでは同じ結果を出すための労力はまったく違ってくるだろう。その軍資金を作るために、やはり最初は頑張らなければいけない。

今は「楽に生きる人」は昔頑張っていた人だけなのだ。

「楽に生きられる」は頑張ることで手に入る

人生を楽に生きるには「レバレッジ」の概念を持つ必要がある。レバレッジとは「てこの原理」のことで、先に述べた事例でもそれが生きている。

このように「楽に生きられる状態」を作るには、頑張ってレバレッジを構築する必要がある。それ故に巷でよく言われる「そんなに頑張らず、もっと楽に生きていいんだよ」という優しげな言葉には条件が抜け落ちていると感じるのだ。正確には「最初に努力してレバレッジの資産を作っておきなさい。そうすれば未来で頑張らなくてもレバレッジの力で、小さな労力で大きな結果を取りに行けるようになるから」というロジックが成り立つといえよう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。