先の総選挙で、立憲民主党と国民民主党がともに略称を「民主党」としたため、投票用紙に「民主党」と書いた400万票が迷子になった。これは両党の得票数に応じて比例配分されたが、400万票という誤差は共産党の得票に近い。
他方、島根1区では、立憲民主党の「亀井亜紀子」氏に対して無所属の「亀井彰子」氏が立候補し、混乱を起こした。これも「亀井あきこ」と書いた票は比例配分された。過去には同姓同名の候補者が立候補したこともある。
先進国では唯一の自書式投票
こういうトラブルが絶えない原因は、日本の国政選挙の投票が、名前を記入する自書式で行われているためだ。いまだにこんな方式を採用しているのは、先進国では日本だけである。これは昔から問題になり、地方選挙では記号式が導入された。
国政でも1994年に公職選挙法を改選したとき記号式に変えたが、翌年の改正で元に戻してしまった。いったん改正した制度を元に戻すのは異例だが、この時期は小選挙区制が導入される公選法の大改正が行われたので、ほとんどの人が気づかなかった。
その理由として当時、新党がたくさんできたので、自民党が「自書式の方が現職や既存政党に有利だ」と主張し、野党も抵抗しなかった。
電子投票は公選法さえ改正すればできる
こういう混乱を防ぐ方法は簡単である。マークシートや電子投票の記号式にすればいいのだ。そうすれば投票はタッチパネルを押すだけで、開票と集計は瞬時に終わり、開票速報などという無駄なものは必要なくなる。今まで全国の10市町村で、電子投票が行われている。
電子投票に対しては機材の信頼性が低いという批判があるが、銀行では何億円もの送金も電子的にやっているのだから、投票ぐらいお手の物だ。セキュリティ技術は、日本のITベンダーの得意分野である。「最初に書かれた候補者が有利だ」とか「候補者が多いとスクロールが必要になる」といった問題は、順序をランダム化すれば解決する。
インターネット投票には本人確認という難関があるが、ブロックチェーンなどの技術を使えばセキュリティは確保できる。そこまでやっているのはエストニアだけだが、若者の投票率が上がり、改革派が第一党になったという。
一挙にネット投票まで行くのは無理としても、電子投票は技術的には枯れた分野であり、公選法を改正すればすぐできる。行政のデジタル化とかDXとか、いくら声をかけても、政治がやらないと日本は変わらない。まず隗より始めよである。