オバマ政権が終わるころ、このブログで同政権への総括をしたことがありますが、株価は上昇、国内景気はリーマンショックからの回復期という特殊要因もあり、経済は概してよかったのですが、外交が散々だったと評したことがあります。オバマ氏自身の手腕の問題か、同氏の母体である民主党の体質なのか、はたまた両方だったかもしれないと思っています。
バイデン氏の第一期目は3年4か月を過ぎ、とりあえず残り8か月となっています。11月の大統領選挙で勝てば更に4年延長戦があるのですが、外交という分野だけに絞って考えるとバイデン氏もオバマ氏同様、散々だと思うのです。この「散々」は個人の受け止め方により差があると思います。また、社会がより複雑化し、情報化社会が進み、かつての手法、常識、制御が効かなくなってきた中で「良き時代の良人ぶり」でどっちつかずの八方美人的なやり方が最終的にコトを複雑化させたのではないか、という気がしてならないのです。
バイデン政権の間に起きた2つの戦争、ウクライナ問題とイスラエルのガザ侵攻に対するアメリカのスタンスはともに微妙でありました。たぶん、民主党のもつ弱者救済的な精神が中途半端さを引き出したのだろうと感じています。これはオバマ政権の時にも共通しています。
ウクライナについてはロシアを叩くなら戦争の初期に一気に攻める必要があったと思いますが、近年まれに見る地上戦でアメリカも欧州も心の準備が十分できていなかったし、誰にどう支援すべきかという枠組み作りをNATOを中心に議論したことが筋違いではなかったのか、という気がするのです。
つまり、当初西側諸国は、ロシア軍は戦線をウクライナ以外にも広げるかもしれないという憶測のもと、NATOは加盟国の防御を最重要課題とし、NATOに加盟してないウクライナをどう支援するかということと併せ、NATO加盟国に戦火の拡大があった場合に備えたわけです。これが「問題の本質の取り違い」ともとれる形になったと考えています。またゼレンスキー氏が各国を回り救いの手を求めたことがまるで被災者への募金活動的な雰囲気となり、戦略的考察が後回しになった感もあり、2年たっても一向に終わらない戦争になってしまったと考えています。その点ではゼレンスキー氏の立ち回りは政治的に見れば失敗だったような気もします。
イスラエルのガザ侵攻についてもネタニヤフ首相の怒りや恨みの気持ちはわからないでもないのですが、今のガザ侵攻のようなやり方しかなかったのか、アメリカが代案を含め、説き伏せられなかったのでしょうか?アメリカの国務長官は相当頻繁に通い詰めたし、それ以外の高官や要人も年中、イスラエルや周辺国との調整を行ってきましたが、大枠の流れはほぼ何も変わったことはありませんでした。
挙句の果てにICC(国際刑事裁判所)がネタニヤフ氏らの逮捕状を請求したと報じらています。バイデン、トランプ、ネタニヤフ氏らが怒り心頭のようで逮捕状が本当に出るのか世界が注目するわけですが、ICCのプライドからして出るような気がします。ですが、私は逮捕状が出るような外交をしたバイデン氏の手腕のなさこそが理由ではなかったのかとも取れないでしょうか?
このあたりを見るにつけ、アメリカ外交の限界なのか、バイデン外交の限界なのか判断がつきにくいところではあります。ここにきてトランプ氏と大統領候補予備選で最後まで戦ったニッキーヘイリー氏が「トランプ氏に投票する」と明言したと報じられています。様々な読みがあるようですが、私は「究極の二択ならトランプ氏のほうがまだまし」という意味だと感じています。11月の選挙まで5か月以上も残す中でヘイリー氏が明白な判断をした理由はバイデン外交はもはや地に堕ちたといいたいのではないかとみています。試験でいうF(Fail)スコアであって仮にトランプ氏が70点でもまだましということかと思います。
最後に日本にはどのような影響があるのか、一言だけ述べてみたいと思います。東アジアの安全保障についてバイデン氏は中国や北朝鮮には十分なプレッシャーが出せない、よって中国や北朝鮮からは足元を見られていると私は見ています。バイデン氏が岸田首相に「北朝鮮、どうぞどうぞ、直接外交やってください」という趣旨だったのはバイデン氏の興味も余力も体力も時間も何もないので岸田氏に頑張ってもらうしかないという意味もあるのだろうと考えています。できればついでに日本がもっと中国問題に腰を入れてよ、と言いたかったのではないかと思います。
こうなれば日本にとってもバイデン外交への期待感が下がってしまうので戦略的に考えれば次期大統領は誰がベターかという議論になってくるのかもしれません。これこそヘイリー氏の論理と同じと言われても致し方ないかもしれません。究極の選択ですが、我々には選択の自由すらないともいえます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月30日の記事より転載させていただきました。