大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『資格起業バイブル』から、再構成してお届けします。
士業事務所の給料は決して高くない
Q:士業事務所で実務を覚えつつ給料も貯めて、効率良く開業資金をつくろうと考えています。
開業資金を貯めるために、士業事務所で働きながらお金を貯めたいと思います。この方法はいかがでしょうか? また、横須賀さんはどのようにして、開業資金をつくったのでしょうか?
士業事務所で働きながら資金を貯めるのは、なかなか簡単なことではありません。繰り返しになりますが、給与は決して高くなく、それでいて高い能力を求められます。そういう意味では、士業事務所で働くことは実務を覚えられるというメリットがあるものの、資金の貯め方としてベストとは言い切れません。
そこで、資金を貯めることと、士業事務所に勤めて実力をつけることを分解して考えてみてはいかがでしょうか。
まず資格を取る段階では、比較的時間の拘束がない仕事を選びます。そして開業資金を貯める段階では、時間的拘束があっても比較的給与の高い仕事を選択するのです。このように段階を経て開業資金を貯めるのもひとつの方法です。
しかしながら、こういった方法にはひとつわかりやすいデメリットがあります。それはすでにおわかりだとは思いますが「時間がかかってしまう」ということです。
仮に100万円貯めるとしても、月に給与から5万円貯めたとして、少なくとも20ヶ月、つまり、1年8ヶ月かかってしまうわけです。順当に行けばこの期間で貯まりますが、病気やケガなど急な出費があれば、途端にその計画は頓挫してしまいます。そのため、計算しにくい方法ともいえます。では、どのように考えるのがベストでしょうか。
開業資金を自力でつくろうとすると、年月がかかりすぎる
提案できる方法としては、資金の半分は自分で用意して、残りの半分を「借りる」ことです。お金を借りるということは、時間を短縮するということです。そのため資金の半分は自分で用意し、半分は借りて準備することで、開業のスピードを早めて準備期間の短縮が可能になります。
ところで、理論上は納得しても感情的にはお金を借りるのが怖いと思う方も非常に多いと思います。私自身も借金に関しては、開業当時は否定派でした。お金を借りるということは、テレビドラマや小説などの影響で「取り立て」「雪だるま式に増える金利」などのような怖いイメージがあります。
私自身も漏れることなくこの「借金アレルギー」になっていて、お金を借りることは最後の手段と考えていました。しかしながら、実際は「借金」は悪いことだらけではないのです。
まず、日本政策金融公庫や都市銀行などの一般的な金融機関からお金を借りることで、一般的にイメージされる取り立てはまずありません。あの恐怖のイメージは、いわゆるヤミ金融といわれるようなところから借りるからこそ起こりうることで、脅迫しても貸したお金が返ってこないことは、融資担当なら理解していることです。
そして、こうした金融機関の金利は一般的に考えられている金利ほど高くなく、返済期間も長いのです。
たとえば私自身、会社として初めて借りたのは日本政策金融公庫から借りた200万円です。この200万円をどのくらいの金利と返済期間で返すかというと、年約3パーセントで5年間。つまり、月々に返済する金額はおよそ4万円から5万円なのです。ですから、いきなり返済が滞るということはまず考えられません。実際は思ったよりのんびりとした返済なのです。
このように、お金を借りることはそれほど大きな恐怖ではありません。月々少しずつ返済し、その返済期間中に売上をつくっていけば、まったく問題ありません。
1ヶ月2ヶ月で返済しろ、その短期間で売上をつくれといわれても難しいかもしれませんが、真剣にビジネスに取り組んで月4から5万円の返済ができないということは逆に考えにくく、言い換えるとその決意ができなければ開業には時期尚早なのかもしれません。
お金に苦しんだ開業創業期
私の場合、開業の経緯が少し特殊でした。
新卒で入ったベンチャー企業にリストラされ、ただ単に「もう人に雇われたくない」という気持ちで開業してしまいました。
そのときの手持ち貯金は10万円程度でした。そこにリストラされたときに支払われた解雇予告手当金の約30万円があり、合わせて約40万円程度で開業してしまいました。
「開業資金は少ないほうが必死で頭を使うようになるから、資金は少ないほうがよい」
たしかにこのようなセオリーもあります。1,000万円以上準備して倒産した会社も仕事を通じて多数見てきましたので、お金があることによって余裕を持ちすぎてしまうという法則も理解できます。しかしながら、言葉以上に少ない開業資金というのは苦労の連続でした。
開業資金が少ないと、なんといっても広告費などの販促費の捻出が難しくなります。手持ちのお金が少ないと、ビジネスにかける費用よりも生活費を優先的に考えることになり、結局何もできない状態が続いてしまうのです。そのため、飛び込み営業や紹介営業などなるべくお金のかからない方法に頼ることになりますが、この方法は、費用が抑えられる一方で決して効率はよくありません。
結果として、時間はあるが仕事はなく、かといって効率よい営業もできなくなるため、真綿で首を絞められように徐々に廃業のことを考えてしまうわけです。
インターネットから集客する方法も、古い本では「ほとんどお金がかからず……」と謳っていますが、現在はネット営業でも広告費が必要な時代です。そのため、開業資金はできるだけ準備してから開業に臨むのがよいでしょう。
私自身はお金に苦しんだことで、お金のありがたみがわかったことは大きな収穫でした。しかし、お金がないことでお金の心配ばかりすると、精神的にもつらい状況になります。ですから、根拠のない「お金がなくてもなんとかなる」という過信は捨て、開業資金はしっかりと用意すべきといえるでしょう。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年8月13日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。