失われた集中力を取り戻す3つの習慣

黒坂岳央です。

過去記事で何度か書いてきたが、多くの人が集中力の低下を感じている。より厳密に言えばスマホとそのアプリによって破壊されてしまったのだ。一度失った集中力はかなり努力と意識をしなければ回復することはない。だが、事実として努力と習慣で復活することが可能なのである。

現代人はじっくり思考できない。1秒でもあればスマホを見て時間を潰す。仕事を30分したと思ったら、トイレに篭ってスマホを見る。これからの人生の生き方について考え始めたのに、10分もせずに別のことをやりだす。

SNSで腹立たしいものを見たら脊髄反射で投稿してしまう一方で、高い集中力を使ってじっくり深く考えるスロー思考ができない。つまり、集中力がないということは昆虫のように思考を介さない「反射」はできても賢者のような「思考」ができないということである。これは大変恐ろしい損害だ。

今回は筆者が取り組んでいる集中力を取り戻す習慣をシェアしたい。

tadamichi/iStock

スマホは通知OFF

最初におすすめしたいのはスマホの通知をOFFにすることだ。人間の集中力を破壊するのは通知による横入りである。

お気に入りの動画やインフルエンサーの配信を見たくて通知をONにしてしまうことで、パブロフの犬のように通知の音や振動と脳の報酬系が餌付けされてしまい、四六時中通知が気になる生活になる。実際に通知が来ない時間も気になるのであれば、目の前のことに集中できていないのだ。

また、スマホは基本的に24時間365日肌見放さず持っているものなので、これを意識的に使わない時間を作るのだ。人間はぼーっとしている時間、運転やウォーキングをしている時間も脳は情報処理をしている。自分の場合、夕方帰宅後はスマホは自動電源オフに設定している。そうすると、仕事のアイデアがいきなり降臨することがよくある。何もしてない時間はムダではない。付加価値の小さい情報を四六時中入れている方がはるかに害悪である。

読書習慣を作る

集中力を作るには読書をする習慣を作ることがおすすめである。これをいうと「自分は本を読むのが苦手なので」という人がいるが、そうした人もショート動画をはじめとした短尺動画や、SNSの短文や画像中心の情報処理をしていたりする。

我が国では99%が義務教育で文字を読むことができるので、厳密には苦手なのではなく技術と訓練が足りないだけだと思っている。苦手だからといつまでも逃げ回っていると、永遠に読書による情報処理の回路が育たない。

加えて、「情報処理をするなら動画のほうが楽だし時間効率がいい」と主張する人がいるが、それは「情報取得」だけを目的にした単眼思考である。読書の本質的価値は文章を能動的に取得し、自分のペースで多角的に咀嚼する過程で情報処理をする高度な知的作業である。受動的で相手の話すペースで複眼的な思考を介在せず、脳が楽して情報をいれる動画とはまったく質が異なる。動画を見続けて賢くなることはないが、文章を読むことで頭の使い方が上手になり、結果賢くなることはあり得る。

ついでにいうと、同じ情報量なら動画より読書の方が速く処理できるので時間効率もいい。自分は動画とテキストなら迷わずテキストを選択する。読書家にとっては動画は読書より遥かに時間効率が悪いのだ。

話を戻すが、読書の習慣を意識して作ることが肝要である。読書に慣れていない人には、1日15分の読書を3回、4回に分けて読むことだ。通勤電車の中で行きと帰り、職場の休憩時間に読むといい。そうすれば必然的に時間分割になるし、スマホを触らずに済む。

自分のように読んだ本の感想や自分の意見を乗せて記事や動画に書くこともおすすめだ。そうすれば、「記事のネタになる話はないか?」と前のめりで読むので、細かい点も見落としなく集中して読むことができる。また、全集中力を総動員しなければ、作品を作ることができないので非常によい訓練になる。

ToDoリストとタイムブロッキング

自分が会社員時代に教わって良かったなと思う技術がToDoリストだ。

仕事をする上で場当たり的で降ってきた順番から仕事を進めるのは、最も効率が悪く集中力もなくなる。今はサラリーマンではないがその日にやるべきタスクは事前にToDoリストに書き出しておく。そうすれば、優先度の高い順から集中してシングルタスクでシステマチックに処理していけばいい。集中しているからいい仕事になるし、脳疲労もあまりない。

参考までに世間的に「マルチタスクは優秀な人がやること」みたいに言われているが、厳密にはこれは誤りである。

スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士の主張によると、人間はPCと違って厳密な意味でのマルチタスクはできない。同時にやっているように見えても、実はデスクの上に複数のタスクを乗せているだけに過ぎず、処理できるタスクは常に1つだけである。それを素早く切り替えているので、あたかも同時に処理できているように見えるだけであり、タスクの切り替えタイミングで確実に集中力は失われている。マイクロソフトの研究機関であるマイクロリサーチが行なった研究では、マルチタスクをすることで生産性が40%低下するとしている。

これをPCやスマホに例えると、メモリ上にブラウザ、家計簿ソフト、音楽プレーヤーなど複数起動しているものの、実際に動作しているアプリ1つを除けば「スタンバイ状態」になっているようなイメージである。マルチタスクが得意な優秀な人、と称される人も100%ピュアなマルチ状態ではなく、卓越したマネジメント力で複数のタスクをスタンバイ状態でメモリに書き込み、1つ1つをシングルタスクで処理できる人のことである。ToDoリストはマルチに投げられたタスクを漏れなく、優先度の高い順に並べ、シングルタスクで処理する集中力を使うスタイルなのだ。

そしてシングルタスクで処理する上で重要なのはタイムブロッキング、すなわちあらかじめ時間を確保しておくことだ。筆者の場合は午前中は執筆活動、午後に動画撮影や編集、最後に問い合わせ対応とタスクを処理する時間帯を決めている。

何度かこの順序を変えたことがあったが、午後は疲労で最も難易度の高い書き物の仕事が捗らなかったし調子も狂ってパフォーマンスも落ちるのでこの順序は絶対領域である。一番ダメなのがタイムブロッキングをしないから、次々と会議や問い合わせ対応に追われ、定時後に自分の仕事をようやくできるもののそのときにはすでに疲労困憊というものである。これでは生産性が高いとはいえない。

現代社会、油断していると誰もが一瞬で集中力を破壊されてしまう時代になっている。意識して集中力を守り、そして失われた集中力を取り戻す習慣を作ることを勧めたい。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。