IMFのデータベースで、世界の人口とGDPについて最新の統計データを確認してみます。
1. IMFのデータベース
前回はIMFとOECDのデータについて、日本のGDP(自国通貨)と1人あたりGDP(ドル換算値)で検証してみました。
自国通貨のデータはどちらも内閣府の国民経済計算と一致します。
1人あたりGDPのドル換算値についてもほぼ合致しますが、近年の購買力平価換算値でやや差異があるようです。
いずれにしろ、IMFのデータは今まで見た来たOECDのデータとも良く一致している事が確認できました。
OECDは欧米を主とする先進国で構成されています。
これらの国々の経済指標について膨大な項目のデータが揃っていますが、その他の地域についてのデータがありません。
IMFのデータベースは191の国と地域についてのGDPや人口、政府収支などのデータが公開されています。
今回から、GDPや1人あたりGDPについて世界各国のデータを眺めていきたいと思います。
今回まずは各国のGDPと人口についてご紹介していきます。
参照するのは、IMFのWorld Economic Outlook Database(April 2024)です。
IMFのデータベースでは、自国通貨ベースの統計データの他に、為替レートと購買力平価によるドル換算値も公開されています。
2. 主要国のGDP 為替レート換算値
まずは主要国のGDPについて、為替レート換算値の推移を見てみましょう。
図1が主要国(G7+BRICs+韓国、インドネシア)のGDPです。
最新の2023年までのデータとなっています。
アメリカ(赤)が圧倒的ですが、中国(薄ピンク)が急拡大しています。
日本(青)は為替レート換算値だと1995年をピークにアップダウンしつつも停滞傾向が続いています。2022年で大きく円安が進み、2023年もそのまま横ばいとなっています。
日本の2023年のGDPは4.21兆円で、ドイツ(4.46兆円)に抜かれた事でも話題となりました。
インドが3.57兆円で、2025年にも日本はインドに抜かれるのではないかと言われています。
為替レートは様々な要因で変動しますので、時価のような側面があります。
3. GDPの国際比較 為替レート換算値
続いて、各国のGDP(為替レート換算値)について、2023年の国際比較をしてみましょう。
図2が2023年の各国のGDP(為替レート換算値)の国際比較です。
アメリカ、中国が圧倒的で、ドイツが3位、日本が4位です。インドが3.57兆ドルで5位、イギリスが3.34兆ドルで6位、フランスが3.03兆ドルで7位です。9位に2.17兆ドルのブラジル、11位に2.00兆ドルのロシアと続きます。
以降はメキシコ(12位)、オーストラリア(13位)、韓国(14位)、スペイン(15位)、インドネシア(16位)です。
人口の多い新興国と、比較的人口の多い先進国が上位となっています。
GDP 名目 為替レート換算
2023年 単位:ドル
1位 27.4 アメリカ
2位 17.7 中国
3位 4.5 ドイツ
4位 4.2 日本
5位 3.6 インド
6位 3.3 イギリス
7位 3.0 フランス
8位 2.3 イタリア
9位 2.2 ブラジル
10位 2.1 カナダ
11位 2.0 ロシア
12位 1.8 メキシコ
4. 主要国のGDP 購買力平価換算値
つづいて、アメリカを基準にして数量的な経済規模の比較となる購買力平価換算値についての国際比較をしてみましょう。
購買力平価は「通貨コンバータであり、空間的価格デフレータである」とも言われます。各国の物価の違いを揃えた上での、数量的=実質的な比較を試みる指標とも言えます。
まずは主要国のGDPの推移からです。
図3が主要国のGDP(購買力平価換算値)の推移です。
購買力平価換算値だと中国はアメリカを上回り、インドは日本やドイツを上回ります。
各国とも為替レートの変動によるアップダウンが無く、基本的に右肩上がりのスムーズのグラフになるのも特徴的ですね。
また、2023年に日本は為替レート換算値でドイツに抜かれていますが、購買力平価換算値ではドイツを2割近く上回ります。
ロシアやインドネシア、ブラジルはフランスやイギリスを上回っているようです。
基準となるアメリカは為替レート換算値と比べて全く変化しません。
5. GDPの国際比較 購買力平価換算値
続いて、購買力平価換算によるGDPの国際比較をしてみましょう。
図4が購買力平価換算によるGDPの国際比較です。
1位中国(32.9兆ドル)、2位アメリカ(27.4兆ドル)、3位インド(13.3兆ドル)、4位日本(6.5兆ドル)、5位ドイツ(5.5兆ドル)です。
続いて、イギリスやフランスではなく、ロシア、インドネシア、ブラジルが上位に来ていて、トルコやメキシコの水準が高い事も印象的ですね。
その他にもポーランドやパキスタン、バングラディシュ、ナイジェリア、ベトナム、フィリピンなどが上位に入っています。
GDP 名目 購買力平価換算値
2023年 単位:ドル
1位 32.9 中国
2位 27.4 アメリカ
3位 13.3 インド
4位 6.5 日本
5位 5.5 ドイツ
6位 5.2 ロシア
7位 4.4 インドネシア
8位 4.1 ブラジル
9位 3.9 イギリス
10位 3.9 フランス
11位 3.6 トルコ
12位 3.3 メキシコ
6. 主要国の人口
次に、主要国の人口の推移を見てみましょう。
図5が主要国の人口の推移です。
2022年にインドが中国を抜いていて、人口世界1位の国になっています。
インド、中国に続いて、アメリカ、インドネシア、ブラジルと続きます。
日本は横ばい傾向が続いていてブラジルと大きく差が開いていますが、1980年の時点ではほぼ同じ人口規模だったようです。
中国とインドが含まれると他国の状況がわかりにくいので、この2国を抜いたグラフも見てみましょう。
図6が中国、インド以外の主要国の人口推移です。
アメリカ以外にも、ブラジル、インドネシア、カナダの人口が大きく増加している事がわかります。
日本は2007年がピークの1.278億人となりますが、以降は減少傾向に転じていて2023年には1.246億人となっています。16年程で300万人ほど減少している事になります。
ロシアやイタリア、ドイツ、韓国も停滞傾向に見えますね。
イギリス、フランスは少しずつ増えていて、イタリアとの差が拡大している様子がわかります。
7. 人口の国際比較
最後に、2023年時点での世界の人口を国際比較してみましょう。
図7が2023年の人口の国際比較です。
インド、中国、アメリカに続いて、インドネシア、パキスタン、ナイジェリア、ブラジル、バングラディシュと続きます。
人口1億人を超えるのが更に、ロシア、メキシコ、日本、フィリピン、エチオピア、エジプト、ベトナム、コンゴです。
日本は1.25億人で、世界で11番目に人口の多い国という事になります。
人口の多い国としてはアジアやアフリカ地域の国が目立ちますね。
インドネシアやパキスタン、ブラジルは購買力平価換算のGDPでも上位に入ってきています。
人口 2023年 単位:億人
1位 14.29 インド
2位 14.11 中国
3位 3.35 アメリカ
4位 2.77 インドネシア
5位 2.32 パキスタン
6位 2.22 ナイジェリア
7位 2.04 ブラジル
8位 1.70 バングラディシュ
9位 1.46 ロシア
10位 1.31 メキシコ
11位 1.25 日本
12位 1.13 フィリピン
8. 世界のGDPと人口の特徴
今回はIMFのデータベースから、世界のGDPと人口についてご紹介しました。
各国のGDPは増加傾向ですが、新興国では人口増加もあり存在感が高まっています。
特に数量的な経済規模の比較となる購買力平価換算のGDPでは、中国やインドだけでなく、ブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコなどが上位となっています。
G7をはじめとした先進国の存在感が相対的に薄れる中、日本経済の存在感低下は著しいようです。
GDP(為替レート換算値)世界シェアで見れば、日本のシェアは1995年で17.8%でしたが、2023年では4.0%です。
人口のシェアは1995年で2.3%、2023年で1.6%です。
GDPは人口に大きく影響されますので、次回以降は1人あたりGDPを見る事で、各国の経済水準を比較していきたいと思います。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。