「県民局長告発文書に関して百条委員会・奥谷委員長・斎藤知事がパワハラを認めている」というデマ【令和6年11月時点】

偏頗的な言説がマスメディアから垂れ流されている

「県民局長告発文書で百条委員会・斎藤知事・奥谷委員長がパワハラを認めた」というデマ言説

https://archive.md/NwNo5 https://archive.md/tnnIK https://archive.md/0TnOh

兵庫県の斎藤元彦知事が、県民局長によって作成された文書が事実無根であることなどを理由として懲戒処分をしたことに関連して、当該文書中の違法・パワハラ等の事実の有無が争点となり県議会の百条委員会が開催されている件で、「元)県民局長の告発文書に書かれている内容について、百条委員会・奥谷謙一委員長や斎藤元彦知事がパワーハラスメントを認めている」という言説が広まりました。

これは令和6年11月25日現在ではデマであり、これらの人物・組織はパワハラを認めてはいません。

大前提として、百条委員会は未だに終わっていません。現在進行形で継続して調査が進められている段階です。

しかし、上掲のように発言の趣旨が歪められたものが大きく拡散されており、その中には実名でメディアや芸能界で活動している者も含まれています。

他方で、「パワハラは認められないと結論付けられた」という趣旨の投稿も同程度に拡散されており、こちらも同様に事実に反する言説であることから【ネット・SNS上のデマ】として扱うところが複数出現しました。

が、「認めている」という誤った言説について検証を加えている媒体は皆無なので、本稿ではこの言説について取り上げます。

ネット炎上研究者の田中辰雄による誤情報「パワハラと言われるものはあったと修正されている」

ネット炎上の研究】【ネットは社会を分断しないなどの著作で知られる横浜商科大学教授兼国際大学GLOCOM主幹研究員の田中辰雄氏が、SYNODOS=シノドスにて兵庫県知事選での斎藤元彦氏の支持者らの言説を分析した論稿を寄せていました。

百条委員会の奥谷委員長が最初の記者会見で、「パワハラと述べた人はいなかった」と述べた動画が繰り返し拡散されたが、これは最初を切り取っただけで、調査を重ねるにつれてパワハラと言われるものはあったと修正されている。しかし、擁護論は修正には言及せずに、切り取りの部分だけを拡散し続ける。このように断片的事実に固執し、全体を見ようとしないのは、陰謀論によくみられる行動類型である。

田中教授は「パワハラと述べた人はいなかった」という言説について「陰謀論によくみられる行動類型」としながら、「調査を重ねるにつれてパワハラと言われるものはあったと修正されている」と書いていました。

このような事実は存在しません。

「最初の記者会見」というのは、意味不明な説明ですが、6人の職員に証人尋問を初めて行った8月23日の百条委員会(秘密会)の後の記者会見を指すと言えます。

この際の発言は以下のものでした。

記者:分かりました。6人のうちパワハラを受けた、または、その判断は本人ができないということで、知事から理不尽に厳しい叱責を受けたと明言された人はいらっしゃったんでしょうか。また6人のうち何人いたか、可能な範囲でお伺いできたらと思います。

委員長:私の認識では明確に知事の方からパワハラを受けたという方はいらっしゃらなかったという風に考えておりますが、それは職員さんの中でもこれがパワハラに当たるのか自分では判断できないという方もおられましたし、そこはこれから我々が聞いた事実を評価して 、パワハラに当たるのかどうか、しっかり評価をしたいと考えてます。

記者:例えば、厳しい叱責を受けたという方は、先ほど奥谷委員長から出た話もあったと思い ますが、どのぐらいいらっしゃったんでしょうか。

委員長:すいません。ちょっと本当にまだ整理ができてないので、あれですけど、厳しい叱責を受けたことがあると言われてた方は結構おられたんじゃないかなとは思います。ただそれがパワハラに当たると思いますとか、そういったことは、おっしゃったという記憶は今ありません。

奥谷委員長が「私の認識では明確に知事の方からパワハラを受けたという方はいらっしゃらなかったという風に考えておりますが」と答えた部分が切り取られて「百条委員会や奥谷委員がパワハラは無かったと言っている」という誤った言説が広まったものですが、その後にパワハラに当たるのかは事実を評価していく、と言っています。

8月23日の会見からは、百条委員会や奥谷委員長はパワハラを否定も肯定もしていないというのが事実です。

県民局長の告発文書に書いてあることが事実としても、それがパワハラに当たるのかどうか?は別の話で、「パワハラか否か」は「評価」の問題です。行政としてはパワハラは定義・要件が決まっています。

8月30日記者会見「書いてある事は概ね事実認定できるのでは」「3月27日の知事会見発言はパワハラ」

続く8月30日記者会見では、奥谷委員長は確かに「書いてある事は概ね事実認定できるのでは」と発言していますが、委員会としての見解ではないとつつ個人的な見解であるという前置きをしており、その事実がパワハラであるか否かの評価は慎重に避けています

また、この日、記者から3月27日の知事会見で斎藤知事が「嘘800」などと発言したことはパワハラではないか?と問われており、これに対して奥谷氏が個人的見解として「パワハラと言ってよいのではないか」と発言しているのは事実です。

しかし、これは当然、【3月12日付の県民局長告発文書に記載されていた7項目の内のパワハラ項目について】ではなく、当該文書の正当性や知事の文書の扱いの正当性とは全く関係が無い話です。

百条委員会の調査事項は「文書の7項目の真偽に関連する事項」であり、記者が問うた内容は、百条委員会の職責からは外れたものです。

2回目の証人尋問が終了した段階の9月6日にも百条委員会が記者会見を行っていますが、ここでも「パワハラの事実が認められる」という発言はありませんでした。

10月の委員会は知事選への影響を考慮して非公開、記者会見動画も無いようです。

11月18日の会見11月25日の会見でも委員会や委員長がパワハラを認定したという事実はありません。

「県の公益通報窓口がパワハラ認定できず」報道はあるが正式公表はされていない

他方で、兵庫県の公益通報窓口が当該文書に関して調査した結果、パワハラ認定できなかった、とする報道があります。しかし、正式公表はされておらず、県議会議員によれば、ある会派の議員から発表を延期するように強い意見があったという証言がある、ということでした。

百条委員会は県議会の調査であり、さらにこれとは別に外部の弁護士などから構成される第三者委員会による検証が行われており、結論が出るのは来年3月頃とされています。

まとめ:偏頗的なファクトチェック、SNS上の言説の片側だけ見た言説に注意すべき

現時点で百条委員会や委員長が現時点でパワハラ認定している、などというデマは、弁護士である奥谷謙一氏の見識にもかかわる話であり、彼の名誉のためにも否定されなければなりません。

百条委員会に関しては偏頗的なファクトチェック、つまりはSNS上の言説の片側だけ見た評価がマスメディア等から流されており、そこにこそ注意すべきです。

特に、日ごろからSNS上の言説を分析している田中辰雄教授から、明確な事実誤認の言説が垂れ流されたのは、彼のこれまでの著作の評価にもかかわる重大なことだと言えるでしょう。

斎藤氏インスタグラムより


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。