今日は面白いベンチャーのサービスのご紹介をしたいと思います。
株式会社シナジードライブという会社が提供する音声SNS VoiceLink(TM)というサービスです。
株式会社シナジードライブという会社は、板倉雄一郎氏が率いるベンチャー企業です。板倉氏は以前、ハイパーネットというベンチャー企業を経営されていました。当時としては非常に斬新な会社で、無料のプロバイダ事業や、Googleのアドワーズの原形のようなビジネスも展開していたのですが、残念ながらタイミング悪く倒産してしまいました。(iモードで有名な夏野氏はハイパーネットの副社長でした)
こちらの本に詳しい顛末があります。社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由
そんな波瀾万丈の人生を歩んで来られた板倉氏の新たなチャレンジが今回のサービスで、私はスタート前から注目していました。
■ベンチャー企業としてのシナジードライブのおもしろさ
シナジードライブは、固定費を極力持たない経営をされています。
例えば、シナジードライブにはオフィスがなく、東京湾岸エリアの某ホテルの一室で現在数人のプログラマーが昼夜働き、その他の社員(?)として、海外や地方都市にいる各分野の専門家が、自宅もしくは自分のオフィスで仕事をしているそうです。更に、給与も(今のところ)払ってないらしく、詳しい契約はもちろん知らないのですがストックオプションなど利益に連動した支払いになるようです。
板倉氏が以前経営されていたハイパーネットは、ベンチャーでありながら資金調達を借金によって行ったことが、斬新なサービスを提供していたにもかかわらず破綻する原因になりました。その真逆をされているわけです。
どんなベンチャー企業でも、サービスでも創業当初数カ月から数年は収入がないことになります。例えば、Googleもスタートから数年は全く売上がなかったし、YouTubeも長く赤字が続きました。Twitterは未だに赤字でしょう。
名もないベンチャーの多くがこの時期に刀折れ矢尽き倒れていきます。どんなに斬新で、どんなに素晴サービスでも、このスタート時点の赤字の期間を乗り切れないなければ終わりです。
しかし、もし、固定費を持たない経営が可能であれば、斬新なサービスがその通りの評価を得て世に出る可能性が高まりますから、日本ではほとんどないこのチャレンジに非常に注目しているわけです。
■どんなサービスか
では、シナジードライブがどんなサービスを提供しているかというと、音声のSNSです。
チャットルームのような形で、最大6名がネット上で同時に通話でき、最大1万人がその会話を聴くことができます。また、通話する6名はルームオーナー権限で入れ替えることができます。
全てのユーザーが、同時に画像や映像を見る機能もあり、プライベート設定もできますので、セミナーや会議などの利用から、個人のラジオ放送のような利用方法まで、様々な利用が考えられるでしょう。
例えば、池田先生と橋下市長が議論をするとして、池田先生が東京で、橋下市長が大阪にいて、お互いに自宅でくつろいだ状態でも、すぐに議論ができます。それを最大1万人が聴くことができ、聴衆の中から他に4名を選んで参加して貰うことができるのです。
詳しいサービスの内容は、ヘルプと、こちらのプレスリリースをご覧下さい。
■キャズムの超えることの難しさ
私は、仕事柄ベンチャーのサービスに注目するのですけれど、私自身の基本的な性格は新しいものが嫌いで、ほとんどのモノに対して、恐らくキャズムの向こう側にいるアーリーマジョリティに属すると思います。
ですから、現在もVoiceLink(TM)に、大変注目をしていますが、人に勧めておきながら、実はVoiceLink(TM)ほとんど使っていません。
そんなアーリーマジョリティに属する者の目からすると、VoiceLink(TM)はスタート時点で失敗がありました。
・プライベート機能が後回しになった
(万人に向けて話したい人はキャズムの向こう側にはいない)
・PayPal認証だった(今はFacebook認証)
(いきなりクレジットカードはキャズムの向こう側にはハードルが高い)
・音質に拘りすぎハウリングを起こすことがあった
(あるレベルのヘッドセットが必要だった)
・録音機能がない
(時間を合わせないと聴けない)
・iPhone、iPadで使えない
(フラッシュを入れれば聴くことは可能)
更に、これはアーリーマジョリティ以降に特有のものではありませんが、私が使ってない理由として「私のノートPCではエフェクトが多すぎて、重すぎる」というのも大きいです。
エフェクトともかく、現在では、録音機能とiPhone、iPad以外は大体クリアーされたのですが、スタート時点で集まった(本来はキャズムの向こう側にいる)人達は去って行ったのじゃないかと予想しています。
なぜかというと、私自身が板倉氏がやってなかったら、恐らく1回しかアクセスしてなく、ここまで追いかけてはいないから。キャズムの向こう側にいるユーザとは身勝手なもので、少しでも合わないことがあるとすぐにいなくなってしまいます。
■キャズムの向こう側
板倉氏は天才だと思っているからウォッチを続けいるのですが、現状では残念ながら、キャズムの向こう側にいる私の心は動いてない。
どんな人でも、キャズムの向こう側を見るというのは難しいのだと分かって、安心したような、余計に不安になったような……。
板倉氏に限らず、ジョブズ氏はキャズムの向こう側がずっと見えていたのか?ゲイツ氏は?ザッカーバーグ氏は?
成功した経営者がキャズムの向こう側が見えているのかというと、そんなことはないでしょう。
キャズムの向こう側にいる人間にとっては「自分自身が使わない理由」は分かりきったことでも、当事者には見えないもの、傍目八目とはよく言ったもので、キャズムの向こう側なんて他人だから言える話でしょう。超ド級の天才でも見えなくなっている時期はあるはずですし、もしかしたら、自分の好きなように闇雲に突っ走ったら、たまたま超えていた、というようなこともあるかも知れません。
■私自身も全く見えない……
もちろん、私自身もキャズムの向こう側は全く見えない。本当に笑うぐらいに見えていません。
例えば、私は「エクセル方眼紙で仕様書を書いているようなSIerを変えたい」と考えています。そのためのソリューションを提供したいと考えています。
しかし、残念ながらキャズムのこちら側にいる人達は、SIerを見限って辞めていき、向こう側にいる人達だけが残っていく斜陽産業で、同じ職場で仕事をしても、彼らが何を考えているのか全く理解できない(笑)。
恐らくは「変わりたくない」と思っているか、「問題などあるはずがない」と思っているから、永久に無理なのでしょうが……。
■言いたかったのはステマです(笑)
なんだかまとまりがないのですが、言いたかったのはステマです(笑)。
VoiceLink(TM)は、良いサービスなんだけれど私自身が使ってない。
キャズムの向こう側にいる人はどんなにサービス自体が良くなっても恐らく使わないでしょう。サービスの成功はサービス自体の出来不出来よりも、コンテンツに依るところが大きいものです。
例えば、Twitterも、Facebookも、サービス自体の出来は私にとっては悪いのですが、多くの人が集まっていて、意外な人に繋がることができる(つまり、コンテンツが良い)から利用しています。
同様に、もし、池田先生が橋下市長を誘ってVoiceLink(TM)を使っていただければ、恐らくそれだけで、日本に於いて言論が好きな層(ニッチ層ですが)のキャズムを、一気に超えるだろうと考えています。
私自身も、そうなれば是非使ってみたい。
VoiceLink(TM)が、キャズムを超える瞬間を見ることができれば、自分にも何かヒントになるかと思ってのステマでした。
Facebookでアカウントを取れば(橋下市長は持ってない?)、本当に簡単にできるので、是非、公開討論をやって頂ければ幸いです。
株式会社ジーワンシステム
代表取締役 生島 勘富(@kantomi)