ヤフーとソニーが不動産マーケットで苦戦する理由

内藤 忍

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ダイヤモンドオンラインによれば、昨年11月にヤフーとソニー不動産がはじめたウェブ上での不動産仲介サービス「おうちダイレクト」が、スタートから3ヶ月で成約ゼロと苦戦したそうです。その後、どうなっているのでしょうか?

金融とIT(テクノロジ―)の融合が「フィンテック」と呼ばれるのと同じように、不動産をITと融合させようという動きは「不動産テック」と呼ばれるそうです。この不動産テックが金融の世界のように、大きく広がらない背景にはいくつかの理由があると思います。

まず、不動産の取引には、売買する人に特殊なニーズがあるケースがあります。例えば、売却していることを周辺の住人に知られたくない。価格よりもス ピード重視で売却したいといった事情です。このような物件は信頼できる人にしか情報が開示されず、未公開物件として市場には出てきません。売り手だけでは なく、買い手も自分で見つけた方が収益的にプラスになるからです。しかし、このような物件こそ買い手にとって魅力ある物件と言えるのです。

また、特に投資用の不動産の場合、購入以外の要素が重要になります。購入の手続だけではなく、どのようなファンナンスを付けるか、さらに購入後の管 理やテナントの確保といったアフターフォローが重要になります。これは、実際に会って話をしてみないとどんな対応をしてもらえるかわかりません。単に物件 が良ければそれで良いという訳ではないのです。

さらに、AI(人口知能)による不動産の価格査定の精度にも疑問があります。物件の評価には様々な要素が影響します。周辺の環境、建物のクオリ ティ、間取り、見た目、構造、施工会社、周辺環境、周辺物件の供給などなど。精度が高くないと売り手にとって有利な査定になってしまい、買い手から見た魅 力は無くなってしまいます。

金融業界で25年以上仕事をし、自分で不動産に投資してわかったこと。それは、2つの資産には取引のプロセスに根本的な違いが存在するということで す。逆に言えば、その違いをうまく利用することで資産運用の成果を高められます。だから金融資産か実物資産かという2択ではなく、2つの組み合わせの最適 化が有効と言えるのです。

金融資産のように、価格の歪みが小さくなりコモディティ化した不動産であれば、今後不動産テックが広がる可能性はあると思います。しかし、投資用の一棟もの案件のような個別性の強い物件に関して広がることはないというのが私の考えです。

(今年初めてのさんまを、お寿司でいただきました)

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。