驚きの診療報酬3.09%大幅引き上げ:医師会ファーストで壊れる日本経済

政府は2026年度の診療報酬改定で、本体部分を3.09%引き上げる方針を固めた。30年ぶりとなる大幅なプラス改定だが、社会保険料負担の増大、薬不足の深刻化、世代間格差といった構造問題をむしろ悪化させるとの批判が強まっている。

診療報酬本体を3.09%引き上げ、30年ぶりの高水準

  • 政府は2026年度診療報酬改定で、医師・看護師の人件費などに充てられる本体部分を3.09%引き上げる方針を決定した。
  • 本体改定率が3%を超えるのは1996年度以来で、物価・賃金上昇による医療機関の経営悪化への配慮を理由としている。

薬価は引き下げ、全体では2%台のプラスに

  • 薬代に当たる薬価部分は0.8%程度引き下げる方向で調整されており、診療報酬全体の改定率は2%台のプラスとなる見通しだ。
  • 24日にも片山財務相と上野厚生労働相による閣僚折衝を経て正式決定される予定である。

賃上げと物価高対応を名目に歳出拡大

  • 本体部分の内訳は、医療従事者の賃上げ対応がプラス1.7%、光熱水費など物価高対応がプラス1.29%とされている。
  • 一方、前回2024年度改定は0.88%にとどまっており、今回の改定は首相判断で大幅に引き上げられた。

医療機関の赤字実態と「医師不足」を盾にした構造

  • 厚労省の調査では、2024年度に一般病院の7割弱、診療所の2割半ばが赤字とされる。
  • ただし、経営が苦しくなっても医師給与は下がりにくく、医師不足を理由に高水準の報酬が維持されてきた構造がある。
  • 医師数を増やさない限り、医療費は下がらず、診療報酬引き上げが常態化するとの指摘もある。

薬不足を加速させる「診療報酬増・薬価減」の矛盾

  • 現場で深刻化しているのは病院倒産ではなく、慢性的な医薬品不足である。
  • 診療報酬を引き上げる一方で薬価を引き下げ続ければ、製薬メーカーの採算は悪化し、薬が作れなくなる。
  • 結果として、薬不足という国家的リスクを自ら拡大させる政策判断だとの批判が出ている。

社会保険料と世代間格差への懸念

  • 年収の壁見直しなどで高齢者の税負担が軽減される一方、診療報酬引き上げは社会保険料を通じて現役世代に跳ね返る。
  • インフレ税で世代間格差が是正されるとの見方もあるが、税収上振れ分や歳出拡大が高齢者中心に配分されれば、現役世代の可処分所得はさらに圧迫される。

市場へのメッセージと円安懸念

  • 診療報酬3%超引き上げは、利上げ局面でも既得権益に譲歩し、歳出削減を行わないという強いメッセージを市場に送った。
  • 国際金融市場では財政規律への疑念が強まり、円安とインフレ圧力を加速させる可能性があるとの見方も出ている。

30年ぶりの診療報酬大幅引き上げは、医療機関支援を名目としながら、薬不足の深刻化、社会保険料の増大、世代間格差の拡大という構造問題を放置したまま既得権益に配慮する内容となった。医療を誰のために、どのように持続させるのかという根本的な議論を欠いたまま、負担だけが現役世代に積み上がる政策判断である。

高市首相 首相官邸HPより