米中首脳会談で見えた「G2」の現実:トランプ大統領は第2次大戦の「同盟」を強調

米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は9月24日(日本時間25日未明)、ワシントンのホワイトハウスで首脳会談を行った。

会談するトランプ大統領と習近平国家主席 バンス副大統領Xより

会談は予想以上の融和ムードとなった。トランプ氏は習氏との「素晴らしい友情」を強調し、習氏も米中の競争は「健全で、一定の範囲にとどめるべきだ」と応じた。

そして習氏が持ってきた“手土産”がパンダだった。米中友好の象徴として2頭のジャイアントパンダが近く米ジョージア州に到着するという。パンダはかわいい。しかし、日本が見るべきなのはパンダではない。

その裏側では台湾、AI、レアアース、半導体といった、日本の安全保障と産業政策を左右するテーマを世界第1位と第2位の大国が直接話し合っていた。

台湾をめぐって習近平氏がトランプ氏に注文

日本にとって最も重要なのは台湾問題だ。習氏はトランプ氏に台湾問題を「慎重に扱う」よう求め、米国が「台湾独立に反対する」ことへの期待を表明した。

ここには小さいようで大きな言葉の違いがある。米国は従来、台湾独立を「支持しない」としてきた。「反対する」とまで踏み込めば、中国側の主張に一歩近づく。

今回、トランプ政権が米国の台湾政策を変更したわけではない。しかし、中国が台湾問題を米中交渉の中心議題として持ち込み、トランプ氏との直接取引を狙っていることは間違いない。

台湾有事は日本有事にも直結する。沖縄・南西諸島だけでなく、在日米軍基地やシーレーン、防衛政策全体に影響する。

高市首相は米中会談の直前にトランプ氏と会談し、中国について意見交換した。「米中関係が日本を含む国際社会の安定に資することが重要だ」と述べたが、日本政府が本当に気にしているのは、台湾が米中間の“ディール”の材料にならないかということだろう。

トランプ外交では、昨日までの敵が今日の取引相手になる。日本だけが「日米同盟は揺るぎない」と唱えていれば済む話でもない。

中国のレアアースに依存する日米

経済安全保障ではレアアースも重要な議題になった。米中は11月に期限を迎える予定だった通商休戦を2カ月延長した。市場にとっては一安心だが、関税、中国による米国製品購入、レアアース、先端技術規制といった根本問題が解決したわけではない。要するに、問題を2カ月先送りしただけだ。

日本にとってもレアアースは人ごとではない。首脳会談に先立ち、米国政府と日本の経済産業省、両国企業の関係者は、中国からのイットリウムや永久磁石の供給問題について協議していた。

イットリウムは航空機エンジンや半導体製造装置などに使われる。中国が蛇口を締めれば、日本企業も困る。

「中国依存から脱却する」と何年も言い続けながら、いざ輸出規制が始まると日米で相談する。経済安全保障の掛け声と現実のサプライチェーンには、まだかなり距離がある。

しかも米中が2国間で貿易条件を調整すれば、日本企業に有利になるとは限らない。米中対立が激化しても困るが、米中だけで仲直りされても困る。日本外交の難しさはそこにある。

AIのルールも米中で決めるのか

今回の首脳会談ではAIも主要議題となった。トランプ氏はAIを「Super Intelligence(SI)」と呼び、習氏もAIは人間の管理下に置かれ、人々の利益に資する必要があるとの考えを示した。AI事故や安全保障上の問題をめぐる米中間の危機管理も議論されている。

興味深いのは、米国と中国がAI覇権を激しく争いながら、一方では「危険なことだけは避けよう」と話し合っていることだ。問題は、そのテーブルに日本が座っていないことだ。

半導体、データセンター、AIモデル、輸出規制、AI安全保障まで米中が国際標準をつくり始めれば、日本は後から出来上がったルールを受け入れる側になる。

日本政府は「AI立国」を唱えているが、研究開発投資だけでなく、国際ルールづくりに参加できる政治力も問われることになる。

「日米同盟」の横で進むG2

さらに象徴的だったのは、トランプ氏が米中協力の歴史を語るなかで、第2次世界大戦中に米国と中国が日本を相手に共に戦った歴史まで持ち出したことだ。歴史的には間違いではない。しかし、その日本はいまや米国の最重要同盟国の一つである。

日本では「日米同盟はかつてなく強固」と説明される一方、ホワイトハウスでは米中首脳が昔の「対日共闘」を振り返る。国際政治は奥が深い。

もちろん、今回の会談だけを見て「米国が日本を捨てて中国に走った」と騒ぐ必要はない。米国は日本防衛への関与を改めて表明しており、日米韓も台湾海峡の平和や中国による経済的威圧への懸念を共有している。

台湾、AI、半導体、レアアース。日本の安全保障と経済の核心にかかわるテーマについて、最終的に話をしているのはトランプ氏と習氏である。

パンダ2頭が米中友好を演出する裏側で、世界秩序を米中2大国が相談する「G2」の色彩はむしろ強まっている。

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