販売に苦戦する地方駅前タワマン

内藤 忍

地方の主要都市で駅前タワーマンションの開発が相次ぎ、地元の富裕層やリタイア組を中心に人気を集めているという話をよく耳にします。高松、秋田、高崎、岡山といった旅行先の駅近にタワマンが建てられているのを見たこともあります。

東京の都心部のマンション価格が一段と高騰し、一般の手には届かない水準にまで上がってしまった中で、相対的な割安感や地方都市ならではのゆとりある住環境を理由に、関心を持つ人も増えているようです。

地方都市の駅前タワマンを買っているのは、地元の開業医や会社経営者、あるいは親からの資産を継承した富裕層といった実需層が中心です。

郊外の広い戸建ての手入れや雪かきなどの負担から解放され、歩いて医療機関や商業施設に行ける駅前の生活利便性は非常に魅力的です。

地方自治体が推進するコンパクトシティ化の波とも重なり、地域の中で最も利便性が高いランドマークとしての価値は一理あります。

しかし、こうした地方駅前タワマンの購入には冷静な視点を持つ必要があると考えています。

地方都市では高価格帯の物件を購入できる富裕層の絶対数が限られています。

実需層に一通り行き渡ってしまうと、その後の需要が一気に落ち込み、中古として売りに出した際に買い手がつかないという出口戦略のリスクに直面する可能性があります。

さらに注意したいのが、建築資材や人件費の高騰によって新築価格の引き上げが限界に達し、地元の購買力と価格設定との間でミスマッチが起き始めている点です。

最近の新聞折り込みに島根県松江市のタワマン「MATSUE THE TOWER」のチラシが入っていました。

竣工記念割引という名目で大幅なディスカウントをするようで、販売に苦戦していると思われます。

地方都市においては、いくら中心部にあるランドマーク物件であっても地元の実需層が納得する利便性と適切な価格水準から離れてしまえば、途端に購入者が見つからなくなります。

単に駅前でタワーだからという理由だけで高い資産価値から人気化する時代は終わりつつあります。

自分で使うために本当に気に入った物件を購入するならまだしも、将来の転売などの投資目的であるのなら地方駅前タワマンの購入は考え直した方が良いでしょう。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年10月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

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