
結論から書きます。今日スマホに残した一行が役に立ち始めるのは、半年ほどたってからです。気の長い話だと思われたかもしれませんが、この半年をどう過ごすかで、自分についての記録はただのメモの束にも、自分だけの軸にもなります。
『AI「自分データベース」』(永松ゆり著)standards
正直に言えば、私も最初は、自分のデータベースなんて一度作ったら終わりだろうと思っていました。過去の経験を棚卸ししてしまえば、素材はいずれ尽きると考えていたのです。ところがAIジャーナリングを始めてから、その考えはすっかり変わりました。データベースは作るものではなく、育てるものだったのです。
話が少しそれますが、こんな日に覚えはないでしょうか。会議で意見があったのにタイミングを逃して飲み込み、先輩のひと言になぜかモヤッとして(理由は、たいていわからないままです)、帰り道に「ああ言えばよかった」と思ったのに、家に着く頃にはもう薄れている。こういう日は「何でもない一日」として流れていきますが、どの瞬間にも、自分が譲れないものや大切にしているものが顔を出しています。
これだけは言っておきたいのですが、立派な日記を書こうとすると、たぶん続きません。机に向かってペンを握る必要はなく、スマホに数行打てば十分です。
話を戻します。今日、「なんとなく、やる気が出ない一日だった」と一行だけ残したとします。1週間後、似たような重い気分の日にもう一行書くと、AIは共通点に気づき始めます。1か月後には「あなたがエネルギーを失う日には、共通点があるようですね」と教えてくれるようになり、3か月後にはその共通点が自分の整え方のヒントになっています。そして半年後には、調子の悪い日に気づいた時点で、自分で自分を整えられる人になっているはずです。
(ただし、記録を毎回同じノートにためておくのが前提です。置き場所がばらばらだと、AIは過去の一行と今日の一行を見比べられません。)
最初のAIは、あなたのことを何も知らない相棒です。一行ずつ預けるうちに、その相棒はあなたの傾向を誰よりもよく知るようになり、いつか人生の岐路で、そっと背中を押してくれるかもしれません。今日の一行を書くかどうかは、半年後の自分に何を届けたいかで決めてもらえればと思います。
尾藤克之(コラムニスト、作家)
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