さらば年功序列:三井住友信託銀行は退職金・年金の年功廃止

三井住友信託銀行が、退職金や企業年金の支給額を決める際、勤続年数に応じて加算する仕組みを廃止する。長く勤めるほど退職時の給付が手厚くなる、日本企業の伝統的な制度を見直す。

日本経済新聞によると、対象は嘱託を除く正社員約1万人。同行は10月に退職給付の仕組みを改め、2026年度中に勤続年数による加算を廃止する。昇進しない場合は従来より支給額が減る一方、2割以上増える人もいるという。

勤続年数より能力と役職を重視

これまで同行では、能力、役職、勤続年数の3つをもとに退職給付を決めていた。見直し後は、退職一時金と確定給付企業年金(DB)には能力と役職を反映し、確定拠出年金(DC)には能力を反映する。金利上昇分も支給額に上積みするという。

「長く勤めても増額なし」とは、勤続年数に応じた加算がなくなるという意味だ。退職金や企業年金そのものがなくなるわけではない。従来の制度では、新卒で入社して長く勤めた人は、勤続年数の加算によって給付が手厚くなりやすかった。反対に、中途入社の人は、同じような役職に就いていても、勤続年数が短い分、不利になりやすい。

今回の見直しは、そうした差を縮めることにつながる。同行にとっては、資産運用やデジタル分野などの専門人材を中途採用で確保しやすくする狙いがあるとみられるが、企業年金はポータブルでなく、それほど画期的な改革ではない。

「辞めると損」が社員を縛る

日本の大企業の退職金制度は、新卒で入社し、一つの会社に長く勤める働き方と結びついてきた。若い時期の賃金を抑え、勤続年数が長くなるにつれて給与や退職金を厚くする。社員にとっては長く働く動機となり、企業にとっては人材をつなぎ留める仕組みだった。

「会社への忠誠心がなくなる」という批判もあるが、仕事内容や職場環境に不満があっても、あるいは別の会社で能力を生かせる機会があっても、長期勤続による退職金を失うことが惜しくて動けない。忠誠心とされてきたものの中には、こうした金銭的な縛りもあったのではないか。

日経によると、王子ホールディングスは2026年春以降に入社する社員の退職金を廃止し、その原資を給与の引き上げに充てる。丸紅も退職給付の一部を賞与に合わせて前払いする仕組みを導入した。働いた分の報酬を、将来の退職時にまとめて受け取るのではなく、現役時代に受け取れるようにする動きといえる。

働き方に中立な給与体系へ

長期勤続を優遇する退職一時金は、社員を会社に閉じ込め、自立を妨げる「社畜」化の仕組みになりやすい。これは給与の後払いなので、廃止して各月の給与に加算することが望ましい。

いまだに税制では、退職給与控除などの優遇措置が残っているが、これは税で転職を不利にするものだ。同じ会社で働き続ける人も転職する人も、その選択で不利にならない制度にすべきだ。

企業は働いた時間の長さではなく貢献の大きさに報い、税制も含めて働き方に中立な給与体系に転換すべきだ。社宅や福利厚生を会社が丸抱えする制度も見直す必要がある。社員が退職金に縛られるのではなく、自分の意思で働く場所を選べるようになることが、本当の意味での年功序列からの卒業である。

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