世界各地で迫害や抑圧、または貧困に苦しむキリスト教徒を支援するバチカン直属の国際カトリック援助団体「困窮下にあるキリスト教会支援」(エイド・トゥ・ザ・チャーチ・イン・ニード=ACN)は毎年11月、信仰のために命を落とした殉教者や今なお迫害されている信者たちに連帯を示すため、世界中の大聖堂や主要建造物を「殉教の血」を表す赤色でライトアップする啓発キャンペーンを展開する。

赤色でライトアップされたザルツブルク大聖堂、バチカンニュースから
ACNは、教会や公共の建物を赤くライトアップすることで、世界中で起きているキリスト教徒への迫害に人々の関心を呼びかける。11月15日から22日(赤の週間)にかけて、多くの国々の教会、修道院、公共の建物が「レッド・ウィーク」と呼ばれるこの取り組みに参加し、信教の自由と連帯を支持する姿勢を示す。
ACNが発行した報告書『世界の信教の自由2025』によると、調査対象となった196カ国のうち62カ国で、「信教の自由」に対する深刻な侵害が確認されてる。ACNは、24カ国で宗教的迫害が、38カ国で差別が行われていると報告している。また、54億人以上の人々が、宗教を自由に実践することが制限されている国々で暮らしている。前回の報告書と比較すると、ほぼ全ての国で状況が悪化している。
ACNによると、その主な原因として、権威主義的な体制、宗教的過激主義、民族主義的な運動などが挙げられている。ちなみに、キリスト教支援団体「オープン・ドアーズ」が発表した「ワールド・ウォッチ・リスト2026」によると、世界中で約3億8800万人のキリスト教徒が深刻な迫害や差別に直面しており、その状況は前年と比べてさらに悪化している。
ANCは、「レッド・ウィーク」の国際的な行動週間を通じて、彼らが置かれた苦境を浮き彫りにし、基本的人権である「信教の自由」を強化することを目指している。世界各地で、約130の大聖堂を含む1000以上の教会や公共の建物がこの取り組みに参加するという。
オーストリアのANC代表トビアス・ペヒマン氏は27日、「信仰を理由に、誰一人として社会の周縁に追いやられたり、暴力を受けたり、命の危険に怯えながら生きることを強いられたりしてはならない」と語った(バチカンニュース)。
思想、良心、および信教の自由が「世界人権宣言」第18条に明記されているが、こうした権利は依然として侵害され続けている。宗教的偏見や差別が社会のみならず、政府、司法・入国管理当局、刑事司法制度の内部にまで深く根を張っているのが現実だ。
「赤の週間」の期間中、建物のライトアップに加え、祈りの集いや、特に深刻な状況にある国々のキリスト教徒たちと対話する機会などが盛り込まれている。例えばオーストリアでは、エルビル(イラク)のカルデア典礼大司教バシャル・ワルダ氏が、テロ組織「イスラム国」による迫害や、イラクにおけるキリスト教徒の置かれた状況について語る予定という。
また、政治機関もこのキャンペーンに参加する。11月16日にはオーストリア連邦大統領府が、続いて11月23日にはストラスブールの欧州議会議事堂が、赤くライトアップされる予定だ。
近年では、ローマのコロッセオやトレビの泉、リオデジャネイロのコルコバードのキリスト像など、数多くの著名な建造物がこの取り組みに参加してきた。
この取り組みは2015年に「レッド・ウェンズデー(赤い水曜日)」として始まり、その後「レッド・ウィーク(赤い週間)」へと拡大された。この赤いライトアップは、キリスト教の信仰が理由で命を奪われた人々の流した血を想起させる象徴的な意味を持っている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年10月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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