東京ポイント1万1000円給付にアプリを使えない高齢者が「デジタル専制主義」と集団提訴?

東京都が公式アプリを通じて都民に1万1000円相当のポイントを配布する「東京アプリ生活応援事業」をめぐり、思わぬ訴訟が起きた。スマートフォンやマイナンバーカードを持たない人が給付を受けられないのは違法だとして、都民13人が10月28日、東京都を相手取り、東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こした。

原告側は1人あたり11万1000円、総額144万3000円を請求している。内訳は受け取れなかったポイント相当額の1万1000円と、精神的苦痛に対する慰謝料10万円だ。

原告の1人である榎本清さん(77)は記者会見で、紙や窓口での申請、現金給付も認めるよう訴えた。訴状では東京都の姿勢を「デジタル専制主義の典型」と批判している。

taka4332/iStock

デジタル化は行政サービスの不平等なのか

東京アプリ生活応援事業では、申請に対応するスマートフォンとマイナンバーカードが必要となる。

原告側は、どちらも法律上の所持義務がないにもかかわらず、持たない人を給付から事実上排除するのは、憲法の平等原則などに反すると主張している。

一方、東京都もスマホの無料貸し出しや対面サポートを実施し、11月4日からは障害や認知症などで操作が困難な人を対象に代理申請も受け付ける予定だ。

行政手続きのデジタル化は、事務経費の削減や給付の迅速化につながる。紙の申請や現金給付を維持すれば行政コストが増えることも事実だ。

1万1000円をめぐる裁判費用は誰が払うのか

今回の訴訟で注目されるのが費用負担だ。

民事訴訟法では、訴訟費用は原則として敗訴者が負担する。ただし、弁護士費用は原則として含まれない。

原告側は弁護士をつけない「本人訴訟」で争うという。弁護士費用を抑えられる反面、資料作成や出廷には時間と労力が必要になる。

仮に原告側が全面敗訴すれば、裁判所が定める訴訟費用を負担する。逆に全面勝訴すれば、原則として東京都が訴訟費用を負担する。

しかし、東京都側の弁護士費用や職員の人件費は別問題だ。原告側が敗訴しても、これらをすべて請求できるわけではない。

つまり、東京都が勝訴しても、訴訟対応に使われた公費がすべて戻るわけではなく、最終的に都民の税金で負担することになる。

問われるのは1万1000円以上の問題

もっとも、原告側の目的は金銭的な利益だけではないだろう。

今回の提訴には、行政サービスのデジタル化をどこまで進めるべきか、デジタル機器を持たない人に代替手段を保障すべきかという問題提起がある。

ただし、制度が不便であることと、法的に違法で損害賠償責任が生じることは別問題だ。

行政の効率化と住民の公平性をどう両立させるのか。1万1000円のポイント給付をめぐる裁判は、デジタル社会における行政サービスのあり方を問うことになりそうだ。

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