3日に実施された米中間選挙の集計が進められているが、野党民主党が上院と下院で過半数を奪回することが確実となった。トランプ大統領は米ニューヨーク・タイムズとFOXとのインタビューで「選挙結果を受け入れる」と潔く表明している。民主党との差が予想以上に開いたために、トランプ氏にとっても選挙結果を承認する以外に他の選択肢がなかった、というのが実情だろう。

トランプ大統領と会談するゼレンスキー大統領 ホワイトハウスXより 2026年7月
選挙結果は、米国の有権者がトランプ米政権の過去2年間の政治に対してノーを突き付けた形だ。有権者の最大の関心事は物価の高騰、イラン戦争に伴うエネルギー危機、ガソリン代の急騰などで、身近な問題に対する不満が強かった。
一方、米国以外の海外の関心事はトランプ政権の外交が中間選挙の結果を受けて変わるかだ。米国の憲法によると、大統領の権限は非常に強く、広範囲に及ぶ。米大統領は、憲法上「外交の主導権」や「軍の最高司令官としての権限」を保持しているが、野党・民主党が上下両院の過半数を握った場合、トランプ氏の外交政策はこれまで通りには実施できず、強いブレーキがかかる。
米国の政治制度では、「外交」と「予算」は密接な関係にある。議会の承認を必要としない「大統領令(Executive Order)」や、軍の最高司令官としての「短期的な軍事行動(空爆の命令など)」、他国首脳との直接交渉については、トランプ氏は今後も自らの意志で強行できるが、大規模な戦争となると資金(戦費)の確保が欠かせられないことから、大統領は議会との交渉を強いられる。
具体的にみる。トランプ氏はウクライナへの軍事・財政支援の削減や停止を望んできたが、民主党は一貫してウクライナ支援を「国際秩序と米国の安全保障の根幹」と位置付けてきた。上下両院の予算権を握ったことで、民主党はトランプ政権の意向に反して、新たな対ウクライナ武器・弾薬支援パッケージや防衛予算を独自に可決・主導することができる。
イラン戦争や対イスラエル支援においては、民主党側は「議会の事前承認なき戦闘の継続」に反発し、国防予算の削減や、無条件の兵器供与・軍事援助をストップすることで大統領に妥協を迫ることができる。ただし、トランプ氏は拒否権を行使して、議会からの圧力をかわすことができる。
また、民主党が上下両院の外交委員会や軍事委員会の委員長ポストを握ることで、「公聴会(ヒアリング)」を武器にした議会の調査権が強まる。 大統領補佐官や国務省・国防総省の高官を議会に呼び出し、イラン情勢への軍事介入や関税政策の裏側について、国民の目の前で厳しい追及ができる。
一方、プーチン政権はトランプ政権のウクライナ支援打ち切りを期待する一方、制裁解除を期待してきた。米議会が強硬な親ウクライナ・反ロシア派(民主党および伝統的な共和党タカ派)に支配されたことで、議会を無視したトランプ・プーチン両首脳外交が機能しなくなる可能性が出てきた。プーチン氏にとって大きな痛手だ。
ちなみに、米国の民主党勝利が、欧州の右派・保守ポピュリズムに何らかの変化が出てくるだろうか。欧州の右派指導者の一部は、トランプ氏の「MAGA(アメリカを再び偉大に)」の勢いに乗って自国の影響力を高めてきた。トランプ氏が国内議会で大敗し、レームダック化する可能性が高まったことで、これらの勢力は政治的・心理的な打撃を受けることも予想されるが、 米国と欧州では抱えている問題が違うから、大きな変化はないだろう。
最後に、欧州の反応だ。ドイツのピストリウス国防相は「民主党の歴史的勝利」と歓迎しているが、多くの欧州指導者は米国の中間選挙の結果に対して「米国の内政問題」という理由で口を閉ざしている。ただ、一部には「内政で敗北したトランプ氏は外交でこれまで以上に攻撃的な外交を展開するのではないか」と懸念する声が聞かれる。いずれにしても、欧州は今後、米国の内政に一喜一憂するのをやめ、現実主義的な視点を一層強めていくことが予想される。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年11月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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