”歴史的な”結果を記した米中間選挙

トランプ米大統領ほど‘歴史的‘という表現をそのスピーチで多用する大統領はいないだろう。トランプ氏はとにかく歴史的なことが大好きだ。そして今月3日に実施された米中間選挙の結果でも歴史的な結果が軒をつらねているのだ。

米国議会議事堂、米国国会議事堂公式サイトから

皮肉で言っているのではない。歴史的偉業や功績を築くには「結果」だけではなく、必ず「原因」があるからだ。原因がなければ、歴史的な結果も生まれてこない。米中間選挙の結果がトランプ氏にとって痛みが伴うものであったが、今回の選挙が数多くの歴史的な記録を築き上げたとすれば、トランプ氏もその功績の一端を担っているといえる。歴史は勝利者だけで成り立っているわけではなく、敗北者の役割を無視してあり得ないからだ。

それでは、米中間選挙でメディアなどが‘歴史的‘と表現した結果を少し整理してみる。

  1. 米ジョージア州では、キーシャ・ランス・ボトムズ氏が黒人女性として初めて知事に就任することとなり、米国の歴史に新たな1ページを記した。
  2. ニューメキシコ州では、民主党のデブ・ハーランド氏が、米国史上初となる先住民出身の知事となる見通しだ。ハーランド氏は2021年から2025年にかけて、バイデン米大統領の下で内務長官を務めた。
  3. ミネソタ州で、ペギー・フラナガン氏が先住民女性として初めて米上院議員に選出された。同氏は、元NFLテレビジャーナリストのミシェル・タフォヤ氏を破っての当選だ。
  4. 伝統的に非常に保守的なテキサス州で、民主党のジーナ・イノホサ氏が、同州初となるラテン系出身の知事となる見通しだ。これにより30年以上にわたる共和党の知事職独占に終止符が打たれる。
  5. サウスカロライナ州でも州上院選において、民主党のアニー・アンドリュース氏が、トランプ氏が支持するダーリン・グラハム氏を破った。この勝利により、アンドリュース氏は1998年以来共和党が維持してきた議席を奪還しただけでなく、同州初となる女性上院議員に就任することになる。
  6. 29歳の民主社会主義者メラット・キロス氏も歴史を刻んだ。エチオピア生まれの弁護士である彼女は、Z世代の女性として初めて米連邦議会議員に選出された。彼女はコロラド州第1選挙区の下院議員選挙で勝利を収めた。
  7. オハイオ州では、エイミー・アクトン氏が、2006年以来となる民主党の知事として当選する見通しとなった。同氏は、同州で知事に選出される初の女性であり、かつ初のユダヤ系人物だ。
  8. 同じくオハイオ州では、民主党のマーシー・キャプチャー下院議員が共和党のデレク・メリン氏を破って当選を果たし、連邦議会における女性議員として最長の在任期間をさらに更新した。キャプチャー氏は1983年から同議席を務めている。
  9. ニューヨーク・タイムズ紙によると、連邦下院の民主党会派では、女性議員の数が初めて100人を超える見通しとなった。また、CBSニュースやNBCニュースも、女性知事の数が過去最多の17人に達する見込みだと報じている。

以上、オーストリア国営放送(ORF)のヴェブサイトで掲載された記事を参考にまとめた。

上記の歴史的結果を見れば、民主党の女性候補者の健闘が目立つ。一方、トランプ氏や共和党にとって伝統的な支持基盤の州で敗北したことは大痛手だ。共和党内で歴史的敗北の分析作業が進められている。

中間選挙の歴史的敗北からトランプ氏の今後2年間はレームダック化するのではないか、両院議会からの圧力に対して拒否権を乱発することで、「拒否権大統領」の汚名を遺すのではないか、といった近未来の予測が既に報じられている。

忘れてはならない点は、人はいつでも勝利者になれるわけではないことだ。時には、再生不能と思われる敗北者の立場を担うことがある。選挙でも同じことが言える。ドイツ語では「人は考え、神が決める」という格言がある。今回の中間選挙結果が共和党にとって惜敗ではなく、大敗であったことは幸いだ。トランプ氏が民主党の勝利をいち早く承認したことで再スタートの条件が整った。敗北の犯人探しをしている時ではない。

ちなみに、今回の中間選挙で勝利した民主党は一枚岩ではない。伝統的な穏健な民主党議員から左派系議員ばかりか、「民主社会主義者」と呼ばれる過激な左派議員が登場してきた。トランプ氏は過激な民主社会主義者を共産主義者だと喝破している。

米国では2年後には次期大統領選が行われる。民主党内の民主社会主義者にホワイトハウスを渡さないためにもトランプ氏と共和党の結束が急務となる。トランプ氏が尊敬するロナルド・レーガン(大統領在位1981年~89年)と並ぶ歴史的な大統領になるチャンスは皆無ではない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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