ロシアの動きは要警戒:JT(日本たばこ)の経営権奪取の衝撃

ロシアがJT(日本たばこ)のロシア部門において経営権を奪取する「一時管理下」にしました。ハードな接収が所有権奪取なのですが、今回は所有権はJTのままなのでソフトな接収ともいえるのですが、配当などがJT本体に行かなくなり、経営陣も追放されると思われるので日本政府が3割以上保有するJT社のロシア部門は奪われたと考えてよいかと思います。ロシアがいつか将来、管理を解除するかどうかは現時点では見通せませんが、個人的には現状のままならしないだろうとみています。

プーチン氏の北方領土訪問、ICC赤根所長への逮捕状、北海道新聞記者拘束とロシアの動きが怪しくなる中で、今回ロシアの中でタバコ市場の37%のシェアを誇るJTが実質的に奪取された事は極めて大きな問題であります。

太平洋艦隊の軍事演習を視察したプーチン大統領 クレムリンHPより 2026年8月

何が起きてるのか、私見を述べます。

ロシアは長年西側諸国から弾圧を受けてきた国の1つであり、非常に苦しい国家運営に耐えてきたともいえます。この耐える中で2つのキーワードがあります。1つはレコンキスタないし失地回復、2つ目がルサンチマン(恨み) であります。

西洋の歴史を遡れば戦争の繰り返しでありますが、その中で領土の取り合いは一時的に大きくなった領土も勢力が衰えることで、相手国が取り返す動きを歴史的に繰り返してきたと言って良いでしょう。戦争の一つ一つだけを見ていると何百年にもわたる呼吸をするような領土の取り合いはわかりにくいのですが、全体を俯瞰すると、基本的には失地回復のスタンスがあちらこちらで出ています。

ウクライナの場合も、ロシアから見れば、失地回復以外の何者でもなく、ロシアの長い歴史の中で当然想定された展開であります。

では日本に対してなぜ突如厳しい態度を取るようになったのでしょうか。

私は複合的要因を見ています。ウクライナ問題に関して、日本がウクライナ側についたことで敵国意識を持っている事はあります。それ以上にルサンチマン、つまり日本に対する恨みがあると考えています。その恨みの根源は日露戦争であります。日露戦争は様々な見方があります。日本から見れば戦争そのものについては日本が勝利しましたが、講和条約では日本は極めて厳しい結果となりました。

一方、ロシアからすれば当時世界最強の艦隊と言われたバルチック艦隊がほぼ全滅した事は、ロシアにとって極めて衝撃的事実であり、その後帝政ロシアが崩壊し、ロシア革命が起きる引き金の一つとなった事実は大きいのです。しかも当時の日本は世界の中ではアジアの新興国の位置づけであり、ほぼすべての人が日本が勝つとは思っていなかっただけに、その衝撃は、我々日本人には計り知れないものがあるのです。

これがロシアにおけるルサンチマンであり、この恨みは簡単には晴れないのであります。よって日ロ関係については、ロシアが日本に対して様々な要求や難癖をつけることはあっても、ロシアが日本に対して譲歩する事はほとんど期待できない、これが歴史的背景だと考えています。

今回、日本に対する虐めをより鮮明に打ち出してきてるのは、アメリカの影響力の弱体化をプーチン氏が読み込んでいるのではないかとみています。JTの件がアメリカ中間選挙の結果を受けた行動だったとまでは言いませんが、少なくとも選挙情勢においてトランプ氏が不利になる=トランプ氏の政治的権力の弱体化をプーチン氏が先読みしてた可能性は高いと思います。

では、日本はこの厳しい状況にどう太刀打ちできるのでしょうか?外交的には極めて困難だと思います。以前も申し上げた通り、日本の外交はアメリカ外交を中心とした垂直展開であり、アジア外交もODAなど経済的援助を前提とした垂直外交の歴史でした。

近年は水平的な外交を推し進めている国もありますが、積極的に展開してきたとは言い切れないでしょう。なぜなら逆説的ですが、日本の外交的弱点はG7の一角であるからなのです。G7の他の6カ国は欧米であり、地政学的と宗教的に距離がある国ばかりで、何かあったときに頼れるような外交と言い切れるのか微妙な面もあるのです。故に日本の周りには、外交的に厳しい国家がずらり並ぶ事態になってるのです。

では、お前ならどうするかと言われれば、強硬姿勢一辺倒ではなく、時としてディールに持ち込む裏技も必要ではないかと考えてます。日本ではあまりそのような手法を使う事はなかったと思いますが、欧米ではよくある手段です。ある意味、日本の外交は真面目一徹なのかもしれません。それがいい時もあれば、問題対応が非常に難しくなる状況を自らが作り出していることにもなり得ると言えないでしょうか。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年11月6日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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