アンスロピックのIPOは延期か:評価額も1兆ドル近くに減額の見通し

AIへの巨額投資を支えてきた市場の熱狂に、急ブレーキがかかっている。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は11月5日、アンスロピックが計画する新規株式公開(IPO)について、大口投資家の間で想定評価額1兆5000億ドルの実現を疑問視する声が強まっていると報じた。

WSJ

同社は感謝祭の前の週の上場を目指し、最大1000億ドルを調達する計画とされるが、AI関連株の急落で史上最大規模のIPOにも逆風が吹き始めた。WSJ

1兆ドルへの引き下げ案も

WSJによると、IPOへの参加を予定する大口投資家3者が、評価額の引き下げが必要になるとの見方を示した。うち1者は、1兆ドルに近い水準になる可能性に言及した。当初想定から約3分の1、5000億ドルもの減額である。

調達額を1000億ドルから800億ドル程度に縮小する案や、市場環境の改善を待って上場を延期する可能性も投資家から指摘されている。ただし、いずれも投資家側の見方であり、会社が延期や評価額引き下げを決定したわけではない。

経営陣と助言会社は今後数日以内に協議する見通しだ。これまで具体的な条件の確約を避け、選択肢を残してきたという。

急成長でも高値は正当化できるか

一方、強気の材料もある。10月末の売上高の年換算ペースは800億ドルを超え、前月から増加したという。ただし、これは直近の売上高を年間に換算した指標で、年間の実績売上高ではない。

この800億ドルを基準に単純計算すると、評価額1兆5000億ドルは売上高の約19倍、1兆ドルでも約13倍になる。高成長を織り込んだ評価であることに変わりはない。今後は売上高の拡大に加え、計算資源への巨額支出を経て、どれだけ利益と現金を生み出せるかが問われる。

9月末の現金保有額は1466億ドルとされ、直ちに資金が尽きる状況を示す報道ではない。焦点は、成長期待に投資家がいくら払うかである。

AI投資全体の試金石に

11月5日の米市場では、ナスダック総合指数の構成企業の時価総額が計2兆5000億ドル失われたとWSJは報じている。競合のOpenAIも、直近の資金調達で当初目標の300億ドルに対し、確保した資金は110億ドルにとどまるという。

アンスロピックはグーグル、アマゾン、エヌビディアなどと事業面で結びついている。上場条件の変更は、同社だけでなく、AI関連企業の評価を見直す材料になりうる。

AIの利用が伸びることと、どんな高値でも投資が報われることは別問題だ。今回のIPOは、AIの成長性に加え、その成長に付けられた値札が市場に受け入れられるかを測る試金石となる。

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