海外に行くのがいいのか

小谷 まなぶ

アゴラのメンバーでありながら、ここ一年近く投稿をしていませんでしたが、また、投稿を再開したいと思います。海外に行くことをテーマに、いろいろ論議されているのを見て投稿しようと思いました。


私は、24歳の時、上海に留学して、それから15年、上海で事業を起業した経験から話をしたいと思います。私の仕事は、上海で起業する日本人のために、現地法人の設立を代行することですから、海外起業したいという日本人のたくさん出会いました。

海外に出てくる日本人が、みんながキャリアーかといえば、そうではありません。上場企業に勤めている駐在員は、キャリアーの人がほとんどですが、自費で、海外に出向いて、自分でビジネスを立ち上げようと思ってくる人、また、海外で就職をして、経験を積んでみたいと思う人は、境遇は様々です。上海には、約10万人近い日本人が暮らしていると言われていますが、その中で、ビジネスをうまくやっている人の経歴などを聞くと、決して、高学歴だから成功しているとも言えません。また、その人の環境がいいから成功しているとも限りません。外国で、ゼロから立ち上げようという人の多くは、気迫が感じられる人です。

年に何百人という上海で起業してみたいという日本人の方と職業柄、話をする機会があります。

海外に出てきて初めて感じる第一印象は、周りが、みんな外国人で、その人が、日本でどんな経歴があろうが、周囲の人々には、関係ありません。その人が日本人としてどんな気質をもっているか、周囲の人は見ています。正直、日本国内でいる方が、キャリアーがあることが優位に働くと思います。

私の観点は、海外で自力で起業しようという人を対象に話しているので、大企業に就職して出世できるかどうかの観点では書いていません。

海外に行けば、鍛えられるのは、その人の生き抜く力、人間力ではないでしょうか。

人としての魅力があれば、たとえ、外国で全く誰も知らない土地でも、時間が経てば、地元の人に認められ、いろいろチャンスが巡ってきます。

私は、海外起業を決心した最大の目的は、「誰も知らない土地で、周りがすべて外国人での環境で自分が何処までできるか」という挑戦心からでした。

海外に行って、経験を積むことが、良いのか、悪いのかと論じれば、あまりに長く海外にいると日本のことがわからなくなり、将来日本に帰ってきた時に、的外れの人になっている可能性があります。外国で学んだ常識が身に付きすぎると、日本の社会では変わり者扱いされます。どこでも生きていけるというサバイバル精神は、身につくので、環境が悪化しても、強く生きていく知識は、身につくかもしれません。ですから、どんな行き方が幸せかといえば、自分に合う環境で生きるのが一番幸せだと思います。日本が好きな人は、日本で生きればいいと思いますし、海外が好きな人は、海外で生きればいいと思います。最近は、月の半分は、日本で過ごし、残りの半分は、上海で過ごすようにしています。理由は、海外生活が長すぎた結果、日本の社会環境下でいると窮屈さを感じる部分があります。

海外で長くいると一番幸せに感じるのは、「外国人として生きる」ということを体感ですからです。外国人として、周りの人々にほとんど干渉されることなく、気楽に生きることができます。この感覚を知ってしまえば、もう、日本社会では生きるのが難しくなると思います。

これは、感覚的な話なので、海外に長くいる人が全て、「外国病?」的な海外に生きる気楽さを感じるわけではないですが、私の周囲にも海外生活が長い人が結構いますが、どうしても、海外に行きたがる傾向があります。たぶん、そのような方々も、「外国人として気楽に生きる」という他人に干渉されたくないという人が多いのではないでしょうか。

海外居住者としてのつぶやきでした。

■小谷まなぶの中国ビジネス奮闘記(公式ブログ)