餃子の王将のスパルタ研修…他の方法はあるのか

松本 孝行

ネット上や学生の間では、ブラック企業が多いと言われがちな飲食業界ですが、先日日経に餃子の王将のスパルタ研修についての記事がありました。意味のない早口での社訓・社是を話すのは「何の意味があるのか」と思いますが、私も別の会社ではありましたが内定者研修でやったことがありますので、研修に組み込んでいる会社は少なからず存在するのでしょう。

こういう記事を見ればやはり学生は萎縮してしまうでしょう。「こんなところに行きたくない!」と思い、エントリーを避けると思います。しかしこのスパルタ研修は記事を読んでいると一理あると私は思いました。


なぜ私が自分では受けたくもないようなスパルタ研修について理解を示したか、それは下記の文章を読んでのことです。

 「外食は就職セミナーにブースを出しても就活生は並ばない。ふるいにかけられた学生がやってくる。そういう世界です。厳しい研修で学生から社会人へ気持ちを完全に切り替えてもらう。辞令だけでは変わらない。厳しい研修を乗り越えられるから、店舗で苦しい局面にも打ち勝てる」

これを読んで「なるほど」と思いました。引用した部分は「ふるいにかけられた学生がやってくる」と婉曲に書かれていますが、要は他社が取らないような能力が低い学生しか来ないということです。東大・京大で知識も知恵もあり、性格的にも優秀な人達は外食には来ない、そう言っているわけです。逆に言えば優秀ではない層が来るところだと言っているのです。

外食産業に就職する人はどういう人か、具体的に能力で考えてみましょう。経団連が発表した「2012年4月入社の新卒採用に関するアンケート」があり、学生の求める能力のランキングが発表されています。この求める能力が高い人ほど優秀で他の業種へ行き、低い人達が外食に来るのが現実です。

  • コミュニケーション能力
  • 主体性
  • チャレンジ精神
  • 協調性
  • 誠実性

具体的にはこれらの能力が低い人達を採用せざるをえないのが、現状の外食産業の実態なのでしょう。

こういった能力の低い人材を使わないという方法もあります。しかしだからといって飲食業の現場労働者に優秀な人材だけを採用し、優秀な人達だけで事業を拡大することなんて不可能です。それなら採用できる人材をいかに使える人材に変えるかが重要でしょう。そこでこのスパルタ研修というのが必要になってくると判断されたわけです。できる限り早く現場で使える人材にするためには、この方法が最適だったのだと思います。一つ一つ論理的に説明して理解できるレベルの人材ではないからこその研修方法なのでしょう。

ある意味このような能力が高くないとされている学生は、日本の教育制度の被害者言えます。小学校・中学校と問題を起こしても卒業でき、能力がついていなくても社会に放り出されるのが日本の教育システムです。その時に読み書き計算もろくにできない状態で、コミュニケーション能力も低い状態の少年少女がいきなり仕事が出来るでしょうか。ほとんど仕事もできない状態で日本の教育制度から放り出された彼らを、教育している側面もあるのではないでしょうか。

私ははっきりいってこういう研修は嫌ですし、受けたくもありません。そして無くすべきだとも思います。しかしスパルタ研修以外に外食産業に来るしかなかった、いわゆる能力のふるいにかけられた若者をどうやって使える人材にすればいいのでしょうか。スパルタ研修以外に彼らが働ける人材になる研修方法というのは具体的に存在するのでしょうか。

私には今のところその代替案が見えません。もしご存じの方がいれば教えていただきたいです。だから私はスパルタ研修も一理ある、そう思うのです。