知財本部「新たな情報財検討委員会」がスタートしました。カドカワ川上さん東大喜連川さん福井検索弁護士NTV宮島さんら昨年の「次世代委員会」メンバーに加え、UEI清水さんトヨタ飯田さんヤフー別所さんら。東大渡部さんと並び、ぼくが委員長を務めます。
昨年の次世代委員会では、AI創作物等について世界に先駆けて議論したが、今回はさらにビッグデータやIoTなどに議論を広げるとともに、著作権以外の産業財産権を含む議論を展開するもの。昨年も頭を抱える難問でしたが、今回はもっとヤバい議論になりそう。
環境変化は、
1)IoTの進展でビッグデータの収集・共有環境が実現。
2)クラウド利用で計算処理能力が向上、ブロックチェーンでデータ利活用も進展。
3)改正個人情報保護法等により法的な基盤も整備。
しかしデータが死蔵されているという指摘あり。
検討の視点は3点。
1)産業競争力の強化
2)保護と利用のバランス
3)国際的な整合・調和
このうち1)に最重点を置いて進めることが会議で確認されました。
課題は2点。
1)データの保護・利用、2)AIの作成・保護・利用。
1)はIoTで大量に蓄積されるデータの権利について、そしてプラットフォーマーの優位性について議論し、産業競争力の強化を図る。
2)はAI創作物に加え、学習用データセットや学習済みモデル等についても知財問題を整理する。
課題1について。生データ自体は不正競争防止法上の営業秘密として以外は知財権で保護されていないが、生データやその蓄積したビッグデータの知財をどうみるか。保護すべき部分があるか。データについてもオープン・クローズ戦略があてはまるか。
課題2について。AI学習用データセットや学習済みモデルは知財制度上どのように位置づけるか。AI創作物に保護が必要となる場合はどのような場合か。
会議ではさっそく、生データやビッグデータの定義が不明確で議論が拡散する、AIの進歩が早すぎて議論している間に状況が変化してしまう、という議論の対象についての指摘がありました。
さらに、国際的ハーモナイゼーション、省庁間連携を図るべしとの指摘。特に後者についてAIやIoTは政府内に10本ぐらいの会議が乱立しており、知財本部としてはその連携・調整は重要な使命。
法制度や契約など保護の手法も論点になるほか、制度論だけでなく、利用促進策や振興策など幅広いメッセージを出すべきとの指摘も。さて、それらを踏まえ、これから議論がスタートです。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。