精神科医、作家として、精神医学や心理学の情報を発信している、樺沢紫苑(以下、樺沢医師)は、「日本で最もインターネットに詳しい精神科医」として、雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。今回は、「正しい時間術」について伺った。近著に『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)がある。
■睡眠を削ったり徹夜は愚の骨頂
――朝起きるときの生活習慣で「1日」が決まる。寝る前の生活習慣で「人生」が決まると、樺沢医師は主張する。
「集中力をリセットする方法がいくつかありますが重要なのは『睡眠』です。ぐっすり眠ることによって、翌朝に100%の状態に集中力を回復することができます。しかし、十分な時間寝られなかったり、眠りが浅くて夜中に何度も目が覚めてしまう状態であれば、朝起きても頭がボーッとします。集中力が低い状態からスタートするわけです。」(樺沢医師)
「朝起きた瞬間にその日のコンディションが決まってしまうのです。ですから、睡眠を削って仕事をしたり、徹夜で仕事をしたりするというのは、「愚の骨頂」と言えます。」(同)
――どうやら、睡眠不足は集中力の最大の敵であり、「睡眠」は集中力を高めて働くために絶対に必要な条件のようである。
「どうすればぐっすりと深い眠りが手に入れられるのでしょうか。それは、『寝る前の2時間』の生活習慣によって決まります。寝る前の2時間にやってはいけないことは、『食事』『飲酒』『激しい運動』『熱い風呂』『ゲーム,映画』『スマホ、パソコン、テレビ』などが挙げられます。」(樺沢医師)
「逆に、やったほうがいいことは、『ゆったりとした時間 リラックスした時間』を持つことです。音楽やアロマなど非視覚系娯楽でのんびりする、家族とのコミュニケーションをとる、ペットとたわむれる、身体をリラックスさせる軽い運動、熱すぎない入浴、読書などです。」(同)
――寝る前にリラックスして緩急をつけることで、睡眠による回復が実現できるようだ。
■徹夜は仕事を怠けていることと同じ
――また、人間には、「交感神経」と「副交感神経」がある。これを上手く切り替えることが必要とのことだ。
「昼は、『交感神経』が優位で、夜になると、『副交感神経』に切り替えて、ゆったりとリラックスして心と身体を回復するのです。『交感神経』から『副交感神経』へ切り替えるためには、クールダウンの時間が必要です。寝る前の2時間にうまくのんびりと過ごせれば,自然に切り替わります。」(樺沢医師)
「眠気が出ない、目がパッチリしている、頭が冴えている、心臓がドキドキする、こうした状態では、まだ『交感神経』のままです。無理に眠りに入ったとしても、身体も脳も休まりません。」(同)
――「仕事を頑張る」ためには、寝る前の2時間の「リラックス」が必須のようである。
「遅くまで残業をすることで、100%までの回復が困難となります。つまり、『遅くまで残業をする』ことは、『仕事を頑張っている』のではなく、『仕事を怠けている』のと同じなのです。寝る前2時間のリラックス時間は、すべてに優先して確保するようにしましょう。」(樺沢医師)
――たまに、徹夜をして睡眠時間が短いことを自慢している人がいるが、それは好ましくないようだ。本書は医学的な見地から、時間術がわかりやすく説明されている。新入社員や新任管理職など、新たな環境変化のあった方におすすめしたい。
参考書籍
『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)
尾藤克之
コラムニスト
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