自分のバイアスに気がつく --- 岩瀬 大輔

アゴラ

誰しも、自分が育った企業や環境によって、価値観は異なる。

例えば。

大きく安定した企業で育った人は

・ 変化を起こすことに対して慎重になる。
・ 事業運営の時間軸が、どうしてもゆったりとなる。
・ 社員はたくさんいて、能力のある人も無い人もいることを前提とする。
・ 人材採用にあたっては、何の仕事をやってもらうかを明確にしない限り、採用しない。
・ 新しい事業を創るのではなく、既存の事業を守ることが仕事の中核であると考える。


一方で、(私のように)少数精鋭のプロフェッショナルファームやベンチャー的な環境で育った人は、その逆。
・ どんどん変化を求める一方で、実行が十分についてこないことも。
・ 時間とスピードに対して敏感・貪欲である一方で、せっかちすぎることも。
・ 社員は皆が能力も意欲も高いことを前提としているが、現実世界は100%そうであるわけではない。
・ いい人がいればどんどん入ってもらい、仕事は自らが創りだすものと考えるが、組織の秩序も大切。
・ 新しい施策に注力してしまい、安定運用に対する配慮が足りないことも。

我々のような「新興」×「生命保険会社(=長期・安定)」であれば、正解は somewhere in between ということになる。スピード感と、長期の視点。変わるものと、変わらざるもの。新しい仕事と、変わらない仕事。

大切なのは、自分の見方や意見が100%正しいわけではないことに気がつき、自らがどのようなバイアスを抱いているかを認識し、それによって正しい答えに着地するようにその見方を修正することだ。私自身、絶えず自分にそう問いかけて、注意している。

しかし、多くの人は、そのように「自分のバイアスを意識し、それによって自らの意見を修正する」ということができない。自分がかけている眼鏡がどのような色が入っているかに気がつかず、自分の意見が正しいと考えてしまう。異なる仕事の進め方があることに理解を示そうとしない。

バイアスをなくせ、とは言わない。なくすことはできない。ただ、自分がどんなバイアスを持っているかを意識していれば、たえず必要な修正を施すことができるはず、ということだ

これは当社のような職場に限らない。

自らの強みと弱みを把握すると同時に、自分がどのような職場環境で育ってきたか、それによってどのようなバイアスを有しているかを意識し、それによって、必要に応じて自らの意見を修正していくことで、よりよい仕事ができるはずだ。

皆さん、自分のバイアスに、気が付いていますか?


編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2014年1月12日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。