ボクシングは奇々怪々

アゴラ編集部

ボクシング、と言えば、今はウクライナのビタリ・クリチコ野党ウダル(UDAR、改革を目指すウクライナ民主連合)党首に注目が集まっています。キエフ体育大学で博士号をとった元WBC世界ヘビー級王者で、弟のウラジミール・クリチコ選手は現役のヘビー級(WBA、IBF、WBO三団体統一)チャンピオン。祖先や家族は旧ソ連時代に辛酸をなめたようで、反ロシア親EUの立場を取っているらしい。クリチコ氏は、5月25日に実施予定の大統領選挙に出馬するそうです。


一方の日本のボクシング界のほうは、相変わらずドタバタ劇が続いています。大阪名物「亀田三兄弟」の亀田ジムが、JCB(日本ボクシングコミッション)から実質的に追放されました。発端は、2013年12月に行われた亀田大毅選手とリボリオ・ソリス(ベネズエラ)選手のWBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦。WBA王者だったソリス選手は、前日の計量ミスで失格になり、WBAの王座は空位のまま、大毅選手の持つIBF王座をかけて戦いが行われたんだが、1対2の判定で亀田選手が負けてしまいました。

素人考えでも負ければ王座陥落は当然です。ソリス選手も資格がないため、IBF王座は空位になる。しかし、試合後のIBFが、ソリス選手が失格していたため、大毅選手の王座は保持される、と発表。おかしな話になっていました。大毅選手が負ければIBF王座は空位、というのは、当事者同士が事前に確認し、その後、否定削除されたものも大毅選手や亀田関係者の試合前のブログにも書かれていたそうです。

亀田ジムとIBF、JBCは、2013年9月の試合でも計量をめぐって揉めています。亀田ジム側は否定しているんだが、ジム関係者らが試合前にJBCの職員を恫喝した、という話もある。こうしたゴタゴタが12月の試合に影響したとも考えられるんだが、IBFをずっと公認してこなかったJCBの態度もあいまい。こうしてリング外のかなり外から眺めていると、やはりJCBの迷走ぶりが際立っています。常に毅然とした態度を示せない。

その後、12月の王座騒動を受けたJCBは、2月4日になって亀田ジムへのライセンスを停止もしくは取り消し、とし、同ジムを実質的な追放処分にします。亀田ジム側は法廷闘争も辞さない全面対決姿勢を崩していないんだが、そもそもボクシングの「興行」はJCBが統括するわけでもなく各ジムが独自に行っています。

亀田ジムの言い分では、12月の統一戦自体がそもそも「タイトルをかけた試合ではなかった」というわけで、そうなれば当然、王座の移動もなにもありません。しかし、事前の告知では明らかに「世界タイトルマッチ」と銘打って試合を興行していた。このへんに矛盾があります。JCBは、虚偽のタイトル戦を掲げたことだけでも問題、としている。いろいろと騒動を起こす亀田ジムを、この際、日本から追い出してしまおう、というわけです。

JCBは、日本国内で行われるプロボクシングの試合を監督する権限を持っているらしいんだが、会長は東証一部上場企業である「東京ドーム」の関係者です。理事にも東京ドーム関係者が複数いる。これはおそらく、後楽園のいわゆる「青いビル」のかつての「後楽園スタヂアム」が各種格闘技の「聖地」とされ、過去に多くのボクシングの名試合が開かれてきたからでしょう。隣の「黄色いビル」には、JCBやJPBA(日本プロボクシング協会)の事務所が入っている。JCBの歴代コミッショナーは、東京ドームの社長が就任しています。

ところで、大毅選手のIBFタイトルのほうはどうなるんでしょうか。IBFのホームページには、「Mandatory」は3月3日、と書かれています。コレはつまり、王者の権利は3月3日まで、という意味。「X-boxing」の記事にも、それまでに亀田大毅選手に挑戦したがっている南アフリカの同級1位ゾラニ・テテ(Zolani Tete)と防衛戦をしないとダメなんじゃないか、という記述がある。どうやら今日で大毅選手はタイトルを剥奪されるようです。ちなみに、ボクシングの階級で、スーパーフライ級はジュニア・バンタム級と同じです。いつもながら紛らわしい。

WBC、WBA暫定の二階級チャンピオンになった日本人ボクサー、ミニマム級の高山勝成選手は、当時、日本のJCBに公認されていなかったIBF王座へ挑戦するため、JCBから脱退までしました。そして、2013年3月30日には名伯楽である中出博啓氏とともにIBF王座を完全アウエーの敵地で奪取。日本人で初めて3団体のチャンピオンになり、さらに平仲明信選手以来、国外で42連敗中だったタイトル戦の記録に21年ぶりのストップをかけました。ボクシング、という世界は複雑怪奇です。チャンピオン認定団体が世界に4つもある。世界王者が4人もいること自体、おかしな話です。12月の大毅選手の試合も、WBAとIBFの統一戦でした。

今日、3月3日は雛祭りなので、東京の後楽園ホールで「プロボクシング女子トリプル世界戦」が開かれます。WBAライトミニマム級、WBCアトム級、IBFスーパーフライ級の3団体3クラスらしい。アトム級というのは、女子の最軽量クラスで、102ポンド(46キロ266グラム)以下。これも紛らわしくてWIBA(女子国際ボクシング協会)ではミニマム級、IFBA(国際女子ボクサー協会)ではストロー級というようです。ようするに、男子以外に女子の国際団体がある。

どうしてこんなに団体が多く分かれているのか、と言えば、ボクシングに関わる人たちは「権力闘争」や「縄張り争い」が好きだからでしょう。「興行」に反社会的勢力が関与しがちなことも、こうした「闘争」に拍車をかける。また、よく「微妙な判定」や「遺恨試合」というように試合で勝敗がつかない場合も多く、多額のファイティングマネーがかかる興行のため、そこに「欲」からんで問題が複雑化する。その結果、もともとは一つの団体だったのが、次第に袂を分かち、これほどまで多くなった、というわけです。

亀田ジム問題にも、総じてこうした事情が背景にあります。ウクライナはともかく「場外乱闘」は見苦しいんだが、こういうのはリング場外の遠くから、そっと眺めているほうが良さそう。なんか、ダラダラ書いていたら長くなってしまった。すみません。

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STAP細胞:ストレスと圧力
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こっちのほうも迷走錯綜しています。画像が間違ったり作為的に処理されているとか再現性がないとか、いろいろ疑いの目で見られている「STAP細胞」なんだが、理研も内部で調査する、と言っています。こうした論文にすべてがハッキリ書かれていることは少ない。理論や技術のキモの部分はわからなくボカしています。特許を押さえたら明らかにするのが普通、というわけで、周辺でにわかに巻き起こってきた国際的な批判がどういう動機なのか、よくわかる。ただ、理系女子の偉業、というのはちょっと違うのかもしれません。

現代版『加藤の乱』はあるのか?
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Windows XP sees a slight increase in share, Windows 8.1 continues to climb
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いったいどうしてサポート終了して将来性のないWindowsXPのシェアがわずかでも増えているのか、という記事です。当方も知り合いも会社のファイアウォールがWindows8に未対応のため、秋葉原でWindows7のマシンを探し回って買ってました。最新のOSが必ずしもいいとは限りません。OSの脆弱性はウイルスソフトで防ぐことができるかもしれない。ネットにつながず外部からデータを入れず、スタンドアローンで使う分には充分でしょう。XPでしか遊べないPCゲームも多い。簡単な画像処理機やゲーム機としてならまだまだ現役です。

これから、スマートフォンの低価格化が進むか
WEB2.0とパソコン講座
確かにまだまだスマホって高いですよね。普通に数万円もする。以前なら実質0円なんて値段で携帯電話が手に入ったんだが、分割払いとは言え、今では難しいです。通信料も高止まり。SoftBankがLINEを買収したがっているのも、Skypeなど、ネットの無料通話が広がるのを防ぎたいからでしょう。今はまだ3キャリアがしのぎを削ってるため、料金も横並びで高くはならない状態なんだが、これが一人勝ちになっても同じことが続くとは限りません。


アゴラ編集部:石田 雅彦