米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比17.5万人増となり、市場予想の14.9万人増より強い結果となった。前月の12.9万人増(11.3万人増から上方修正)を上回り、3ヵ月ぶり高水準。今回、寒波と積雪といった天候要因の押し下げを確認しており、「悪天候のため就労不能」は、60.1万人、前月の26.2 万人および過去平均での31.7万人を上回った。「通常はフルタイムだが、悪天候のためパートタイム」も685.5 万人と例年の131.5 万人から5倍以上も急増している。なお過去2ヵ月分は2.5万人分、上方修正された。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が16.2万人増となり市場予想の15.5万人増を上回った。前月の14.5万人増(14.2万人増から上方修正)を超え、3ヵ月ぶり高水準となる。特にサービスが14.0万人増と、前月の8.4万人増を上回り、こちらも3ヵ月ぶりの水準を示した。
寄与したサービスのセクターは、以下の通り。
・金融 0.9万人増>前月の0.2万人減
・ビジネス・サービス 7.9万人増>前月の4.2万人増
(特に労働市場の先行指標である派遣は2.4万人増と、前月の0.2万人増から大幅増)
・教育と健康 3.3万人増>前月の1.0万人増
・娯楽と宿泊 2.5万人増>前月の2.2万人増
政府は1.3万人増と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。州・地方政府が支え、連邦政府も0.6万人減と減少トレンドを保った。一方で小売は0.4万人減と2ヵ月連続で減少。情報も1.6万人減と3ヵ月連続で減少した。なお情報の雇用減少は、映画・音響が大勢を占めている。
財生産業は2.2万人増と、前月の6.1万人増から増加幅を削った。
・建築 1.5万人増<前月の5.0万人増
・製造業 0.6万人増と前月と変わらず
失業率は、6.7%。市場予想、および2008年10月以来の水準を示現した前月の6.6%を上回った。利上げの数値目標「6.5%」から、やや遠ざかったかたちだ。
・失業者数 前月比2.23万人増と1月の11.5万人減から増加へ反転し足元の減少トレンドにブレーキ
・就業者数 前月比4.2万人増と前月の63.8万人増から大幅に伸びを縮小
・労働参加率 前月に続き63.0%。1978年以来の低水準に並んだ2013年12月の62.8%近くを維持
・不完全雇用率(経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている被雇用者) 12.6%と2008年11月以来の13%割れを維持
・平均失業期間 1年ぶりの水準を改善した前月の35.4日から37.1日へ延びた。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のヒルゼンラス記者は、米2月雇用統計の後に記事を配信。「Fedはテーパリング継続へ、フォワード・ガイダンスの変更を検討(Fed Likely to Continue Taper, Consider Changing Forward Guidance)」のタイトルそのままに、18~19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で100億ドルの追加減額を決定する見通しと伝えた。
以上、米雇用統計を踏まえると悪天候でも雇用増加を確認しており、失業率も引き続き低水準を維持してます。3月FOMCの100億ドル減額は、もう既定路線ですね。
それより、今後の金融政策を決定する上で重要なポイントとなる賃金動向をおさらいしておきましょう。
時間当たり平均の労働賃金は、市場予想および1月の前月比0.2%上昇より強い0.4%上昇の24.31ドル(2505円)だった。8ヵ月ぶりの高い伸びを示す。前年比も市場予想および1月の2.0%より強い2.2%となり、3ヵ月ぶり高水準だった。一方で週当たりの平均労働時間は、市場予想の34.4時間を下回り、34.2時間。2011年1月以来の水準へ短縮している。製造業は雇用が増加した半面、平均労働時間は前月と変わらず40.7時間。2007年以来で最高を記録した2013年11月の41.0時間を下回る水準を保った。
こうした内容を踏まえBNPパリバのジュリア・コロナド米国担当主席エコノミストは「春の芽吹きを感じさせる内容」と評価。悪天候の影響で「労働時間が前月比0.2%短縮の34.2時間となった」と指摘したものの、時間当たり賃金が0.4%上昇したことを好感している。さらに「生産・非幹従業員の賃金は前年比で2.5%の20.50ドル(2120円)と、建設セクターがけん引し2010年以来の強い伸びを達成」した点に注目。「賃金動向の転換期に差し掛かってきた可能性がある」と分析した。
一方で金融情報サイトのゼロヘッジは週当たり賃金に注目し、コロナド氏とは反対の立場をとる。生産・悲観部従業員の週当たり賃金は前月比0.2%低下の682.65ドル(7万310円)、前年比では1.0%の上昇と2012年終盤以来の低い伸びにとどまっていたためだ。
生産・非幹部従業員の週当たり賃金上昇率、Fedのインフレ目標値「2%」の半分に過ぎません。
(出所 : Zerohedge)
さらに全従業員の週当たり賃金も831.40ドル(8万5630円)と、前年比1.3%の上昇に過ぎない。これは「2009年以来の低水準」とし、労働市場の回復に疑問符を打った。
(出所 : Zerohedge)
筆者は、ゼロヘッジの分析に軍配を上げます。なぜなら、あくまで筆者周辺の話ですが転職活動を行う人々の間で昇給幅が限られているためです。もうひとつは、リクルーターの存在。米2月雇用統計で大きく増加した「派遣」だと、リクルーターがピンハネする割合は企業側の提示額の半分以上に及ぶことがあるんです。派遣社員の給与明細にはリクルーターと企業が契約した賃金ではなく、リクルーターと契約・派遣・登録社員が表示されますから賃金は抑えられるわけで。しかも求職中であるあなたの要求が高いと、リクルーターは案件をよそにもっていってしまうという悪循環・・。労働市場がまだまだ買い手市場であることを踏まえると、賃金の上昇は望み薄です。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年3月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。