AppleがiPhone 4購入者に無償で、バンパーと呼ばれるiPhoneケースを配布すると発表しました。
AppleはiPhone4 のアンテナ感度問題については、実際には問題視されるほどのことではないという立場を維持しながらも、バンパーを配ることでユーザーからの苦情や、それに乗ってこようとするさまざまなアジテーターの攻撃を避ける対策を実行したわけです。
実際のところ、iPhone4のアンテナ感度が本当にそれほど悪いものか、そうではないのかは判断つきませんが、あまりに強すぎるiPhoneの勢いに、同業他社がよってたかってバッシングに相乗りして場外乱闘を仕掛けているという要素はあると思います。
いずれにしても、この対策で、本当に感度がよくなるのかどうかはまだ試していない(というよりiPhone 4がまだ届いていない^^;)僕には分かりませんが、Appleバッシングはいったんこれで収まることになるでしょう。
ところで、Appleへの今回のバッシングは、なんとなくトヨタのプリウス リコール問題に似ている気がします。
問題は製品にあるにしても(トヨタの場合は必ずしもそうではないかもしれませんが)、圧倒的に強くなって市場を形成しつつある商品に対して、場外乱闘を挑むことによって得をするライバル達が多く、彼らのロビー活動によって騒ぎが大きくなった可能性がある、ということです。僕はマーケティングというのはありとあらゆる手段をとって、企業が自社への利益誘導を行うための戦略・戦術であると考えています。そこに正義も悪もないし(法律に触れない限り。そして消費者の反感を買わない限り)勝つためにはライバルの弱みを叩くのは当然です。僕がもしMSのCEOであったとしたら、相当のカネを払っても消費者保護団体を煽ってiPhone 4の不買運動を仕込むかもしれません(裏で糸を引いていることはばれないようにしないとなりません)。
最近の日本の企業トップはそういう行為をあまりしない(できない)ナイーブな感覚になってきているのかもしれませんが、欧米企業のCEOは絶対にそういうことをやっています。日本でも、「不毛地帯」「華麗なる一族」などに描かれたように、高度成長期まではそういう権謀術数は日常茶飯事だったはずです。(例えばマツキヨなどのドラッグストアやコンビニの棚の取り合いは、いまでもそんな激烈な競争をしていると思いますが)
プロレスでも善玉であっても時に(3カウント以内で)反則技を使ってみせることが強さを見せることになるように、ビジネスにおいてもそうした非情さは認められると思います。
僕個人の感覚でいえば、もちろんそういう反則・裏技は好きではありません。好きではありませんが、読者の皆さんと共有したいのは、ビジネスはきれいごとではなく、そういうハードボイルドな世界であるという認識です。自分がそういうことをするかどうかは別として、相手がそういうテクニックを使ってくる可能性が常にあるんだと認識してほしいのです。
ビジネスは常に戦いです。消費者にはそういう裏の熱い戦いの様相を見せないようになってきていますが、その分裏側の競争は激烈になっています。
(このあたりは拙書『ソーシャルメディアマーケティング』の市場リーダーの防衛戦の章をご参照ください)
今回、AppleのジョブズCEOが「たかが携帯電話」「アンテナ感度問題はたいしたことではない」と発言したことが話題になり、トヨタの豊田社長が、リコール問題への対応が遅かったことが批判対象になったように(付け加えるとオバマ大統領がメキシコでのBP油田事故への対処が遅かったことで支持率を落としているように)、リーダーはさまざまなハプニングやアクシデント、あるいは挑戦者からの多角的な攻撃に対して敏感でなくてはなりません。それはコンプライアンスというような事務的な問題ではなく、降り掛かってくるリスクに対する、過敏なまでの配慮です。インテル創業者の言葉を借りればパラノイア(偏執狂)でなくてはならないのです。
Appleはジョブズのカリスマがものをいって、今回のトラブルにあってもなんとか難を逃れるでしょう。しかし、普通の企業のトップは失態の後のフォローではすまない場合がほとんどです。問題が発生したら、即反応する。それが大事です。それこそ拙速はあっても恒久はないのです。
企業のリーダーは社員の生活基盤を背負い、株主・顧客などのステークホルダーを守る必要があります。そのためには、問題発生に対しては、誰よりも敏感に、腰が軽くなくてはいけないのです。
世の中の変化に敏感であり、リスクのにおいを嗅ぎ取り、将来の方向性を決めていく決断力を持つ。いずれにしても曖昧な態度や、遅さを露呈してはならない。広く感じ、深く考え、早く行動する。それがすべてです。
コメント
「この対策」って何ですか?
本文記事中にある日本オフィスのバナーのことかと思ってクリックしても、これは単なるバナー広告で本文とは関係なさそうです。
$(body.content)←これが原因の可能性もあるので、とりあえず指摘しておきます。
the media loves a failure
in a string of successes
the facts won’t ever matter
if they can make bigger messes
ここまでは類似点が多いですね。でも騒ぎの収め方には社長の器、文化の大きな違いが見て取れます。
if you don’t want a Prius, don’t buy it.
if you bought one and you don’t like it, bring it back.
but that’s not what you want.
記事を修正されたようで意味が通じるようになりました。BLOGOSの方も反映されているようです。
記事中のバナー広告はダイナミックに変わるみたいで、日本オフィスと名指ししたのは良くなかった思われ、この点は遺憾に思います。失礼しました。