MCA無線を事業仕分けの対象に - 池田信夫

池田 信夫

孫正義氏が「800MHz帯がほしい!」とツイッターで何度もつぶやいている。ソフトバンクは電波の飛ばない2GHz帯と1.5GHz帯しかもっていないため、「電波が届かない」という苦情が多いのだ。この主張については、NTTドコモも批判するように疑問があるが、周波数が高いと不利なのは事実である。

では800MHz帯にソフトバンクに割り当てられる周波数がないのかというと、実はある。下の図のように、850~60MHzと905~15MHzが、MCA無線という業務用無線に割り当てられているのだ。


MCAの利用者数は非公開だが、30万人以下と推定されている。隣のNTTドコモが20MHz×2で5000万人以上の利用者を収容しているのに比べると、電波の利用効率は1/100だ。これは財団法人「移動無線センター」によって運営されており、その役員は次のようになっている:

 会長:森永規彦(広島国際大学学長)
 理事長:松本正夫 常勤(元 総務省 技術総括審議官)
 専務理事:飯田正視 常勤(元 郵政省 関東郵政監察局 総務監察官)
 常務理事:杉山博史 常勤(元 総務省 九州総合通信局長)
 理事:清水勉(常勤)・窪田 茂(常勤)・水本伸二(常勤)

このうち会長は名誉職だが、常勤理事6人のうち3人が総務省(または郵政省)出身者である。なぜこのような収益性の高い帯域を非営利の財団法人が使っているのか、そしてその役員の半分が天下りなのはなぜか、総務省は説明する責任があるだろう。

MCAは昔から批判の対象になっており、1.5GHz帯は2014年までにサービスを停止して携帯に周波数を明け渡すことになっている。800MHz帯も携帯と合併するとか携帯業者に売却するという話がたびたび出たが、立ち消えになった。事業仕分けの対象になるという噂もあったが、昨年は対象にならなかった。しかし上のように、これは典型的な天下り法人であり、電波という国民の共有財産を浪費している点で、普通の天下りより罪は重い。今年の事業仕分けでは、ぜひ対象にしていただきたい。