★★★☆☆(評者)池田信夫
著者:上川 龍之進
東洋経済新報社(2010-08-20)
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民主党の代表選挙では、「政治とカネ」で大きなハンディキャップを負った小沢一郎氏が意外に善戦し、ほぼ互角の情勢だ。これは何も決まらない菅政権の現状に国民がうんざりし、強いリーダーを求めていることが一つの原因だろう。
この点で、あらためて小泉政権が再評価されている。民主党政権が掲げて実行できなかった「政治主導」や「官邸主導」を曲がりなりにも実現したからだ。ところが民主党は「小泉改革で格差が拡大した」という虚構にもとづいて「市場原理主義」や「グローバリズム」を仮想敵にし、バラマキ福祉で国民の歓心を買おうとして見事にこけてしまった。
著者の問題意識も、戦後の政治史上でまれに見る「強い首相」はいかにして可能だったのかということだ。しかし残念ながら、その分析はこの問いに答えず、新聞記事をなぞって小泉政権のあれこれの政策を跡づけるだけに終わっている。その結論も、小泉改革はいわれるほど政治主導ではなく、自民党や財務省などの抵抗勢力との妥協によって中途半端に終わった、という常識的なものだ。
たしかに小泉改革が中途半端に終わったことは事実だが、その背景には明治以来の内閣制度や官僚機構が戦後改革で解体されなかったという歴史的な問題がある。また日本の法体系が極端な「大陸法」型で、議会の権限が小さく行政の権限が大きいという構造的な問題もある。
小沢一郎氏が的確に認識しているように、日本の政治をだめにしているのは政治家にも官僚にも共通の過剰なコンセンサスである。田中角栄の時代のように日本がぐんぐん成長しているときは、政治はその果実をみんなに平等にわけるだけでよかったのだが、経済が縮んでゆくときは「痛み」を誰に負担させるかで深刻な争いが起こる。
ところが自民党=大蔵省によって形成されたコンセンサス構造は、こうした「負の問題」を解決するメカニズムを内蔵していないので、混乱が続いてきた。ましてそういう政官の合意形成システムを知らない民主党政権が宙に浮いてしまうことは避けられない。
しかし本書はそういう構造的な問題にはふれず、二次情報で自民党内の微細な政治力学を追うばかりで、本質的なアクターである官僚機構の内部構造も分析していない。ジャーナリストが書いた本ならしょうがないが、「政治学」と銘打った本としては物足りない。
コメント
小泉政権が再評価されているというのは本当ですか?
だとしたら嬉しいですね。
わたしは自分のブログで小泉改革をずっと評価してましたから。
しかしわたしに同調してくれるブロガーさんは一人だけでした。
自民党支持者のブロガーさんほど小泉改革へのネガティブキャンペーンに騙されてました。
彼らの中では未だに麻生さんが大人気です。
そして多くが三橋教徒でかれのカルト経済学を未だに信じてます。保守系のブロガーの中でわたしは完全に孤立してました。
まぁそれはいいとして小沢氏を小泉氏と同列に語るのは如何なものでしょうか?
小沢氏はバラマキで選挙に勝ち権力(それに付随する利権)が欲しいだけの俗物としか思えません。(偏見でしょうかね?)
小泉氏は有権者に真実を語り信頼を勝ち取ろとしました。
「格差があってはいけないのか?」(という内容だったと思いますが)日本の政治家にとってはかなり勇気のいる発言です。
国民を欺こうとしなかった彼の政権が最後まで高い支持率を誇っていた事実がわたしがまだ「焼け野原」ではなく政治的リーダーシップにより日本を再生出来ると信じる根拠なのです。
それともわたしはまだ絶望が足りないのでしょうか?
私も小泉首相が好きでした。彼の魅力は政策云々ではありませんでした。敵を作っても自分の信じるところを敢然と進もうとするその意思、勇気が好きでした。
菅総理も就任した時には少しそれを感じましたが、例の消費税発言で周囲に叩かれその狼狽ぶりに失望しました。概ね最近の政治家は具体的に政策を語りたがりません。多分、敵を作るのがいやなのでしょう。結果、選挙は情実と利益誘導が基本となります。「とにかく自分を支持してくれ」これだけです。票のためなら何でも約束します。「票乞食」と評するゆえんです。
小泉は郵政解散をして、「賛成の人は支持してくれ。反対の人の票はいらない。」とはっきり言いました。そこに私は彼の選挙民に対する「信頼」を見ました。小沢氏のように良いことだけを言って腹の中では何を考えているのかわからない人間と小泉は似ているように見えて全く違いますよ。
それです。それですよ。『信頼』!
彼は日本人を有権者を信頼してくれたんですよ。
我々はそれに高い支持率で応えたんです。
だからわたしはまだ日本人に絶望出来ないでいるのです。