中国の新聞である『東方早報』の報道によると、春節明け(旧正月)の上海の人手不足は、非常に深刻な状態である。飲食関連の従業員は、20万人以上の人員が不足しているということである。
理由としては、上海の物価急騰の為に、地方出身者にとって非常に暮らしにくい街になっているということが言える。家賃、食費、交通費などの生活に直結するコストが高くなり、地方都市より少し給料が良い程度で上海に出稼ぎに来ても、出費がかさむので、実際には、収入に対してほとんど貯蓄できないという現状がある。
また、80年代、90年代生まれの若者にとって、労働条件が厳しい飲食店での勤務は、魅力を感じないということも理由としてあげている。中国は、急激に豊かになってきており、若者は、労働条件が厳しい環境では、働きたがらないことが言える。
インターネットの普及や、携帯電話による情報通信が発展したことで、世の中の情報交換が容易にできるようなった。その結果、自分の働いている環境、それに対する収入などを他社と簡単に比較できるようになった。少しでも条件の良いところに転職する傾向が年々強まっている。
情報社会の弊害というのか、経営者側から見れば、情報が氾濫して、雇用が安定しないということが言える。生活環境の向上を求める傾向も強くなってきており、上海の物価水準の中で、いい環境で生活でき、そして、厳しくない労働環境で仕事をしたいという中国の若手労働者の意識が強くなっており、そのような条件で、仕事を与えることが出来ないと思う経営者の考えのギャップが、人手不足を生んでいるということである。
私自身、上海に住み始めて15年目になるが、毎年、物価が高騰しており、文化的な生活を維持するには、高いコストがかかると思っている。日本の地方都市で暮らす方が、生活コストがかからないと思える程度である。中国人の要求が高まり、それに対応した賃金を出さなければ人が集まらなくなった大都市上海、もはや、コストを求めて人が集まる街ではなくなった。今までの賃金バランスで維持できなくなった上海は、さらに賃金高騰よる物価上昇を余儀なくされるだろう。
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