AmazonのEC2長時間ダウンにみるクラウドコンピューティングの未来 - @ogawakazuhiro

日本時間の2011年4月21日(米国時間 20日)から、Amazonが提供しているクラウドコンピューティングの基盤サービスであるEC2に重大なトラブルが発生している模様で、世界規模で さまざまな利用企業に対して深刻な影響を与えています。

このトラブルのため、カナダのソーシャルメディア向けコンテンツ配信サービスのHootSuieや、Q&AサイトのQuora、位置情報ゲームサービスのFoursquareなどの有力ネット企業が一時的なサービス停止に追い込まれています。
実は僕が経営するモディファイのSaaSサービス群のほとんどが、このEC2を利用しており、我々の事業に(とクライアントの皆様に)も決して軽くない影響が出ています。(クライアントやユーザーのみなさまには多大なご迷惑をおかけしていることに、大変申し訳なく思っています)

AmazonやGoogleなどの巨大ネット企業がリードして、ここ近年大きな盛り上がりを見せているクラウドコンピューティングとは、簡単にいうと以下のようなサービスです。

  • インターネット上の仮想サーバーを利用してWebアプリケーションを活用する
  • ユーザーはWebブラウザーを介してアプリケーションを利用する
  • 作成データもネット上の仮想サーバーに置くことができる
  • Webアプリケーションを開発するためのサーバートしても利用可能
  • ハードウェアも、開発用のソフトウェアもネットワークサービスもすべてインターネット越しにレンタルする利用形態


このEC2が長時間ダウンしているさまは、まるで電力会社の発電設備が故障し、広域に対して停電や電力不足を招いている状況に近いものがあります。

これまで、世界各国の IT企業がクラウドコンピューティングこそが未来のコンピューティングであって、今後世界中の企業がその恩恵を受けることになるだろうという見方が急速に広まってきており、それに異論を唱える向きはほとんどいなくなっていました。サーバーを自社内のサーバールームで保有したり、iDC(データセンター)を契約したりすることは非効率であり、時代遅れになる。そういう風潮が世界的に広がっていたのです。
クラウドはインターネットの活用形態をユーティリティー化、すなわち水道や電力のように従量課金で使えるようにするという試みであり、これを進めることはイコール社会インフラの整備を急ぐことであったわけです。

しかし、今回の震災による原子力発電所の重大事故が我々に改めて電力供給の多様化の必要性や、原子力という、低コストではあっても何か障害があった場合の影響の大きさを再認識させたように、EC2の事故もまた、我々IT業界に在る者に、今後は無邪気にクラウドコンピューティング礼賛することを許さないだけの、強烈なインパクトをもたらしています。

とはいえ、多くのネットベンチャーにとって、クラウドコンピューティングおよび、その代表であるAmazonのEC2は、なくてはならない大事なサービスであり、それなしでは少なくともこれまでの成長はなかったかもしれないほどのものです。いたずらに、クラウドに依存することは危険、と断じることはわれわれにはできないし、今後もクラウドコンピューティングは紆余曲折を経ながらも、世界全体のプラットフォームになっていくことに変わりないと信じています。

今回のネット業界における「震災」から、どのような教訓を得られるかは、結局は自分たち次第である、そう考えています。