ソフトバンクの孫正義社長が「自然エネルギー財団」を創設すると発表して以来、再生可能エネルギーに就いての議論がネットを賑わしている。
孫正義社長の如く影響力のある方の発言であり、提灯記事も数多く書かれ、無視出来ない数の読者支持を得ている様である。
危惧するのは、今回の原発事故の科学的、工学的検証の終わっていない段階で、再生可能エネルギーの実態を何ら理解する事なく、孫正義社長にエールを送るが如き安易な姿勢である。
池田信夫先生は、昨日これに関し下記の如く呟いている。
原発=悪で自然エネルギー=善という勧善懲悪の図式でしか考えられない自称ジャーナリスト RT @ld_blogos: ■自然エネルギーの普及阻む勢力と戦う孫正義氏/田中龍作 http://bit.ly/i8Qb0C
今後、再生可能エネルギーの実態を殆ど理解していないマスコミが、同様の安易な態度で国民をミスリードするのではないかと深く危惧する。
こう言う時こそ、国益を弁え、何が正しく、何が間違っているのかの規範を国民に垂れるのが、政治家本来の仕事である。しかしながら、早速、玄葉国家戦略担当大臣が妄言を吐いている。
再生可能エネルギーの実態をしっかりと踏まえての発言であろうか?とてもそうは思えない。
福島第一原発事故に関連して「現在の国のエネルギー基本計画に盛り込まれている『2030年までに、新しい原子炉を14基つくる』という計画はありえないもので、これから大きく見直しを迫られる」と述べ、今ある原発の建設計画は抜本的に見直す必要があるという考えを示しました。そのうえで、玄葉大臣は、みずからの地元の福島県の復興について、「今後、太陽光、風力といった再生可能エネルギーの割合が飛躍的に高まるのは間違いない。日本の再生可能エネルギーの基地にするくらいの意気込みが必要だ」と述べました。
玄葉氏はNEDOと言う独立行政法人をご存じないのであろうか?1980年に設立され、年間2,000億円以上の予算を使い、理事長は歴代経済産業省次官の指定席である。
問題なのは、殆どの再生可能エネルギーを30年以上も手掛けながら、何一つ物に出来ていないという惨憺たる事実である。
こういう現実を少しでも知っておれば、今回の如き軽率な発言は出来ないと思うのだが。余りに不勉強である。
再び、池田信夫先生の昨日の呟きである。
はっきりいって、経産省の官僚は「自然エネルギー財団」なんか相手にしてない。彼らの主戦場は東電解体と発送電分離。孫さんは、また「光の道」のときのように戦場を間違えている。
経産省はNEDOの監督官庁であり、年間2,000億円超の予算を30年以上使いながら、再生可能エネルギー活用の道筋を付ける事に失敗している。その経験から判断して、孫氏ポケットマネー10億円で再生可能エネルギー活用を実現出来る筈がないと判断するのは当然である。
再生可能エネルギーの活用に就いては、決して一時の浮足立ったムードに流される事なく、少なくとも過去30年間のR&Dの成果(NEDOに成果報告書として保管)を精査し、何が採用可能かを吟味の後議論すべきと思う。
山口 巌
コメント
原発の是非、放射能の害のみならず、「再生可能エネルギーは使えるのか」という物理学の問題が、イデオロギーによって決定的に違う、という状況を何とかして欲しいのです。
何十年研究してもものになってない、普及していないのが使えない証拠だ…ヨーロッパを見ろ、普及していないのは原発や石油の圧倒的な研究費と補助金だ…そんな言葉をいくら積み上げても、イデオロギーが違う人には通じない水掛け論です。
医学なら「プラセポ対照二重盲険治験」で、任意の治療法の有効性は確実になります。科学の本質は実験結果の再現可能性でもあります。
再現可能な実験で、再生可能エネルギーによる近代産業社会の維持発展が可能かどうか、きっちりと検証して欲しいのです。
思想的な論、理屈の積み重ねは左右どちらも信頼できない、少なくとも権威ある科学雑誌による検討がほしいです。
言葉はイデオロギーを同じくする人は説得できても、違う人には届きません。政府や環境団体など、研究所の権威もイデオロギーの壁で説得力を失います。
再現可能実験だけが、それを破れる可能性があるのです。
そしてもし、本当に再生可能エネルギーが使えないのなら、化石燃料もウランはいつかは枯渇しますから…その時のことも考えなければならないでしょう。
また、今後の技術進歩を前提にした再生可能エネルギー…洋上風力、宇宙太陽光、砂漠の大規模太陽熱から大電流送電、外洋施肥による海藻養殖…左右どちらも頭から否定する傾向も打破すべきです。
「再生可能エネルギーは使えるのか」この問題こそ、人類全体の行く末にとっての最重要問題だと繰り返しておきます。
原子力と再生可能エネルギーを比較する際、原子力の科学的、工学的な技術に関してのことと再生可能エネルギーの組織的背景、人員的背景に関してのことを比較するのではなく、原子力の科学的工学的な技術に関してのことと再生可能エネルギーの科学的、工学的な技術に関してのこと、原子力の組織的背景、人員的背景に関してのことと再生可能エネルギーの組織的背景、人員的背景に関してのこと、というように、ちゃんと整理して比較検討したほうがいいと思います。
この記事では原子力に関しては「原発事故の科学的、工学的検証」と書かれているのに再生可能エネルギーに関しては技術そのものの科学的工学的な検証に関してではなくどちらかというと組織の成果や活動履歴に関しての指摘になってしまっているので。
全体的に、再生可能エネルギーに関しては技術そのものの科学的工学的な検証に対しての掘り下げ、原子力に関しては組織的背景、人員的背景、活動遍歴などに対しての掘り下げが足りないと思います。
NEDOが指摘しているように、風力・太陽光は発電量変動の幅が大きく変動周期も短いため、非常に送電系の負担となっている。
これを改善するためには、上位送電系統を並列化して調整可能にしたり、蓄電設備(電池・キャパシタ・揚水等)を整備する必要があるが、その費用が莫大であり、それを計上すると自然エネルギーのコストが非常に高くなる(ドイツ送電会社が抱える今一番の悩みの種)。
いまの電気料金で自然エネルギーへの転換は不可能であり、消費者がそのコストを容認する合意をしない限り自然エネルギーの時代は来ないでしょう。
そのためにも、NEDOや有識者には、自然エネルギーを主力とするのに必要なスーパーグリッドの導入コストを明示して頂きたいものです。
そして、有機野菜ブームの2の舞にならない様にしてほしいものです
日本の風力発電会社は40円/kwで買い取ってもらっても赤字と聞く。
燃料コストが0のはずなのにそうなっているという事はいくら設備のコストダウンが進んでも割にあわない、という事ではないか。
どなたか正確な資料を紹介していただけないだろうか。再生可能エネルギーを推進する方の資料には現状の分析資料が見当たらない。
原発の否定が即再生可能エネルギーに行くという状況には深く疑問を覚えますが、一方で、池田氏をはじめ、原発礼賛組みは使用済み燃料の最終処分まで含めて原子力のサイクルを閉じたレベルで論じていないという欺瞞があります。
最終処分場も決まっておらず、地下深くに埋めるとしても地震の多い日本では果たして安全に保管できるのか、今回の地震を見ても疑問の残るところです。
この使用済み燃料の問題は原子炉自体の安全線をいくら高めても残る問題です。
結局のところ現実的には徐々に原子力からほかの発電手法に移行せざるを得ないというのは事実なんじゃないでしょうか?
短期的には天然ガスだったり、石炭だったり、似たよらざるを得ない部分もあるでしょうが、将来的には再生可能エネルギーも視野に入れてやっていかないと立ち行かない部分もあるでしょうしね。
ヒステリックな原発否定もどうかと思いますが、同様にヒステリックな自然エネルギー否定も同様にイデオロギッシュで醜悪です。
http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_gunma30/jichiken/5/17/01.pdf
http://hokuriku.mof.go.jp/img/keizai/wind.pdf
供給単価は12.54円/kW ですね。設備利用率20%前後で繰越金が発生していますが、基金積立を見ればわかるように、風車の撤去分も積み立てることができていません。しかしながら、本州だと機器の故障以外にも落雷や台風のリスクが高まるので、この収支だと設備修繕費に回せる余裕はあまりなさそうです。
また、東京電力の家庭用電源は、大体17.5円/kWなので送電コスト等を考えると、この買取単価を上げるのは難しいかと思われます。
自然エネルギー財団の説明動画でも、送電網と発電・販売を上下分離する必要性を訴えてますけどね。どうして斜に見てしまうのでしょうか?嫉妬のような気がします。(違ったらゴメンナサイ)
もし、上下分離(電力の自由化)が重要なら、別に自然エネルギー財団を否定する必要などないではありませんか?
電力行政に一石を投じる事で、これまで言われ続けてきた電力の自由化にも大衆の耳目が集まるのですよ。そうした副次的なメリットを見ないで、主戦場を間違えているという言葉が第一声に来ることはどうしてもおかしい。
ある意味人間的で分かりやすいともいえますがね。NEDOの成果が芳しくないのは何故でしょう?他国に成功事例があるなら、NEDOの例は失敗例です。その失敗例をもって、だから自然エネルギーは大した事がないと何故結論付けるのか、およそ科学的では有りませんね。独立行政法人という組織体と、それに群がるイノベーションとは程遠い連中が出した成果を唯一の成果と見る滑稽さを嗤いましょう。
費用・コストについてNEDOなどが計算できるとは思えない。
実業の世界でもまれた人間の方が遥かに計算高いとみます。
ソーラーのパネルが今後幾らまで価格が下がるか?
風力の発電機がどの程度まで価格が下がるか?
蓄電池、蓄電設備がどの程度効率化し、どの程度まで価格が下がり、どの程度まで普及するか?
複数の条件が絡まって、その条件の変動も社会全体の
変化を広くある程度性格に読み込まなければ予測できません。
価格変動は社会実験出来ません。鍛え上げられた実業家の仮説に基づいて、政策実行するしかないのです。それが信じられないのならば日本発のイノベーションはいつまで経っても実現しません。
6. Silmeril さん、資料ご紹介いただきありがとうございます。
思ったより買い取り価格が安いですが、それにしても赤字、ですね。
設備稼働率が悪すぎるのと設備消却が高いのが基本的な原因でしょうが、風相手ではこれ以上はよほど条件を選ばない限り無理ですね。しかもこれにはバックアップとしての他電源のコストが入っていないようだから、トータルとしてのコストはもっとあがってしまいます。だからこれ以上買い取り価格を上げられないのでしょう。
これに比べると40円で買い取りを要求する孫さんの意見は首を傾げてしまいます。電力会社側のコストはプラス夜間のバックアップでさらにかさ上げされてしまうので、太陽光電気料金は現行の消費者価格17.5円に対し3倍くらいになりそうです。これはいくら何でも、無茶でしょう。その差額を国(税金)負担?そんなばかな。
孫さんが税金をもらうだけじゃないですか。
ましてや、太陽光発電はいくら効率が上がっても、基本的には面積を広げる事でしか出力が稼げないので太陽光発電所なんてやった日には恐ろしいコストになりますね。
結局発電てのはどれだけのエネルギー密度を出せるか、って事のように思います。
sudoku_smithさんへ.
風力発電の成功例もあります.
日本初の大規模化に成功した北海道・苫前町からの答え
http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/special/071218_tomamae01/index.html
きちんと調査をし, しっかりとした計画を立て, コストダウンを行った例です.
しかし, 無計画に作ったケースもあります. 有名なのは愛媛県伊方町で, 人家の近くに風車を立ててしまったため, 騒音が大問題になりました. それとは別に, 最近の風車は巨大化して1km以上離れても騒音被害があるという話も聞きますが, 未確認です.
「40円/kWhでも赤字」の詳細はわかりませんが, イメージだけで無計画に作った自治体が多いからだと思います. 結局のところ, 風力に適した場所は日本には少なく, それを厳選してきちんとコスト意識を持って運営し, やっと成功するのだと思います.
>しかし, 無計画に作ったケースもあります. 有名なのは愛媛県伊方町で, 人家の近くに風車を立ててしまったため, 騒音が大問題になりました. それとは別に, 最近の風車は巨大化して1km以上離れても騒音被害があるという話も聞きますが, 未確認です.
風車の低周波問題も、原発推進派の情報操作のような気がします。世の中には自然に低周波が溢れています。耳慣れない言葉を用いて大衆を不安がらせて、少しでも風力発電の可能性の芽を摘もうとの魂胆が見え見えです。
ソーラーの過小評価も同じレトリックです。実際に世界では実用化が進み、実績値で原子力を上回るコストパフォーマンスをたたき出しているのに、それを反駁するにはあまりにも独善的な机上計算。世界に日本しかなければ国民は騙し続けられます。しかし、世界ではどんどん自然エネルギーの可能性にかけた投資が行われ、実績を積んでいるのです。
izumihigashiさんへ.
愛媛県伊方町の風力発電が起こしたのは普通の騒音問題です. 私は関西のテレビ番組で知りました. ネット上で調べると, 風力好きな人もこのケースには批判的なようです.
環境省の資料によると:
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12319
観測されたのは31.5Hzや160-200Hzの音. 伊方町I宅で25-55dBを記録しています. 55dBだと普通に環境基準違反です.
夜に風車を止めることにしましたが, 当然採算性が落ちます. なんとか夜間も動かしたいとして, 住民ともめたようです.
——
他に伊豆熱川の風力発電もトラブルを起こしているようです.
http://blogs.yahoo.co.jp/izuatagawa2007
このブログ主は「風車に反対なのではなく, 不適切な風力発電に反対している」と主張し, 反原発の主張もしています.
——
> ソーラーの過小評価も同じレトリックです。
本当に太陽光発電が安いなら, 補助金を一切受け取らず, ベンチャーとかでどんどん導入すればいいんです. 誰も止めません. もし「安いけど補助金をよこせ」と言う人がいたら, それは詐欺師です.
私はグリッドパリティまであと数年かかると見ています. そうなったら各家庭への設置が進むでしょうが, それでも各家庭内の補助的な電力という立場のままでしょう.
一番の課題は発送電分離なのに, その実現が絶望的だからです.
>このブログ主は「風車に反対なのではなく, 不適切な風力発電に反対している」と主張し, 反原発の主張もしています
それは失礼しました。
>本当に太陽光発電が安いなら, 補助金を一切受け取らず, ベンチャーとかでどんどん導入すればいいんです. 誰も止めません
コスト安になるまでの助走期間を短縮する為に導入へのインセンティブを与える事は重要です。現在の発電におけるエネルギーバランスが自由に任せて自然に今のバランスになったとは思わないでしょう?
自然エネルギー、それも分散型に適したソーラーパネルの導入促進に政策的プッシュがあったって全然おかしくないし大量生産すれば必ず安くなる。生産ラインを増やして作りすぎぐらいに作れば半額以下になる。
原発に比べてソーラーパネルの導入に反対する動機は希薄ですからコストさえ下がれば何処にでも、それこそ至る所に導入できる。
そうなるまでの助走期間。ベンチャーに二の足を踏ませない安心感を政策で与えてやる必要があると思います。実際、欧米はそうしているし、それで日本よりも普及が進んでいます。
izumihigashiさんへ.
> コスト安になるまでの助走期間を短縮する為に導入へのインセンティブを与える事は重要です。
その通りです. つまり, 今はまだ太陽光発電は「高い」のです.
太陽光発電が安くなりグリッドパリティに達したら, 速やかに補助金を廃止しなければいけません. 補助金は市場を歪め, 熱心な企業の足かせになり, 自由な競争を妨げることになります.
しかし発送電分離が実現しないことには, 風力や太陽光の発電が広まっても, 売電した電力は捨てられることになります.
「コスト安になるまで」という、その前提すら議論すべきことです。
太陽電池・風力発電には自動車と違い量産効果が原理的に働かない、年に千基でも百万基でもコストは高いままだ、という意見も多く見られます。
研究すれば安くなるのでしょうか?
量産すれば安くなるのでしょうか?
原理的にどうしようもないのでしょうか?
ひたすら市場に任せればいいのでしょうか?原発や火力は原理的に低コストで優れているのでしょうか?
どうすれば実証的な話になるのでしょう?
風力発電は成功例があります.
日本初の大規模化に成功した北海道・苫前町からの答え
http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/special/071218_tomamae01/index.html
きちんと調査をし, しっかりとした計画を立て, コストダウンに努めたケースです.
しかし, 無計画に作った失敗例があちこちにあります. 苫前町長も「風況調査が不十分だったのではないか」と話しています. ひどいケースでは騒音公害さえ起こしています.
私としては, 風力発電に適した場所は日本には少なく, その上で努力してコストダウンし, 初めて成功すると思っています. 普通の起業と同じです.
——
太陽光発電のコストには2種類あります.
(a) 電力会社が太陽光発電所を設置する場合のコスト
(b) 電力の消費者(住宅・工場など)が設置する場合のコスト
現状明らかに(a)は高すぎ, 実現不可能です.
(b)では電力料金との比較になり, 互角になる分岐点をグリッドパリティと呼びます. 現在ではかなり近くなったとされているようです. 電力料金が約20円/kWhで, 曇天時の対策もいらないので, それほど無謀な目標ではありません.
現在, 太陽電池メーカーはグリッドパリティを目指して努力している最中で, あと数年で実現すると見られています.
では実現したら原子力も火力もいらないかというと, 残念ながらそうはならないでしょう.