太陽光にずいぶん注目が集まっています。ソフトバンクの孫さんが音頭を取り、全国の多くの知事さんたちが集まり、また菅総理は1000万戸に太陽光パネルを設置するとサミットで確約しました。しかし太陽光だけに注目するのはどうも違和感があります。もっと視野を広げた議論が必要だと感じます。
太陽光は発電が天候に影響されるので、駄目だという意見もあり、また発電力が小さいということも問題視されていますが、それは本質的な話ではありません。
電力は蓄電できないので、夏場の電力消費のピーク時にあわせて発電設備能力が整備されてきています。だから普段は設備がフル稼動しておらず、電力は余っているのです。太陽光が不得意な深夜などはまさに電力が余っており、電力会社はオール電化で消費電力の平準化を進めようとしているぐらいです。問題はピーク時の電力確保です。
太陽光発電は、夏場の電力消費が増えるときは、太陽光による発電量も増えるので、すべて太陽光に変えるというのではなく、ピーク時対策としてはありえます。この点を木走正水さんが、ブログで冷静に指摘されているように感じます。
太陽光発電は「積分値」ではなく「微分値」で見ると有益性が見えてくる – 木走日記 – BLOGOS(ブロゴス)
いろいろ太陽光の欠点を懸念する意見が見られますが、ほとんどの問題はクリアされます。日本は都市部以外は土地が余っているので、メガソーラーが現行法で農地に設置できるかどうかはわかりませんが、問題があっても、その気になれば法改正をすれば可能です。現在はコンクリートで基礎をつくる農業プラントも確か現在では農地につくれませんが、それもつくれるようになるものと思います。
シリコンなどの資源の問題はあるかもしれませんが、最大の問題はコストです。現在は一戸建て家屋で200万円程度と設置への初期投資が高く、回収ができない、あるいは回収に極めて長期を要します。また発電効率も悪く、他の発電方式に比べ割高な発電だということにつきます。
普及を急ピッチで促そうとすると、設置に対する補助金、あるいは余剰電力買取りが鍵になってきますが、それは確実に政府の出費が増加することを意味します。
もし太陽光パネルにイノベーションが起こり、大きく価格が下がり、さらに発電効率があがれば、状況がかわるので、こういった財政出動は、目標値を掲げ、技術やビジネのイノベーションを促進する期間を限定することが望まれます。可能性があるのなら、積極的にイノベーションに投資することは決して負の遺産となりません。
ただし、エネルギー対策特別会計についての詳細はわかりませんが、組み換えを行うことも必要でしょう。見る限り、あれもこれもの事情に合わせた予算だと見えますが、戦略はなにに賭けるかを絞り込んでこそ戦略になります。
エネルギー対策特別会計(経済産業省PDF資料)
しかし、原発に代替する電力となると、太陽光ではありません。発電効率があがれば曇天でも発電できるでしょうが、それでも安定的な電力品質は保てません。風力も怪しくなります。他のコストがかからない、安定して発電できる自然エネルギー利用を考えなければ、脱原発というのは絵に描いた餅にすぎません。地熱発電は現在でも日本は優れた技術があり、原子力と遜色のない発電コストですが、プラント建設に時間を要します。
しかし、電力不足はまったなしの状態です。もし、定期点検中の原発の再稼働が、地元の反対で、できなければ、さらに深刻な電力不足の状態が続きます。それこそ日本経済の危機がやってきます。
問題は、太陽光にしても、風力にしても、また不安定な電力を組み合わせることに関しても、かなりの大きなイノベーションが必要であり、それが実際にどうなっていくかは、誰にも予測がつかないことです。半導体のムーアの法則のようにはいきません。しかし、これまで着手に遅れていただけに、イノベーションを起こす余地がまだまだ残されています。
そうなるともっと異なるアプローチで、節電ビジネスのほうが実を取るという可能性もでてきます。20%節電効果をあげれば、必要な電力も20%減ります。
そう思っていると、さっそく記事がでていました。記事によると、空調機のダイキンが太陽光の赤外線を最大で約90%反射させ、室内の温度上昇を防ぐ塗料を開発し、すでに販売し始めているというのです。工場の屋根に塗れば、空調機器で使用する電力を15%程度が節電できるそうで、順調に引き合いが増えているとのことです。
この塗料以外でも、節電ビジネスにさまざまなイノベーションが起こってくるに違いありません。
ダイキンの「塗るエアコン」売上高倍増 工場で15%節電も – SankeiBiz(サンケイビズ) :
なにか太陽光ビジネスがホットになってきそうですが、それはそれで良いとしても、そろそろ冷静に、日本のエネルギー・ビジョンを描き、なにを変えれば良いかをしっかり議論し、カテゴリーを超えたイノベーション競争が起こるしかけを考えないと、太陽光こけたら皆こけたということになりかねません。
しかし、いったい誰がこのような議論を行い、政策に反映していくのかがよくわかりません。与野党で、この日本の経済に大きく影響するエネルギー問題についても互いにしっかり議論してくれればと思うのですが、どうも政党政治の欠陥ばかりが目立つ昨今は、互いに足を引っ張り合っているうちに政治そのものが迷走し始めたように感じてしまいます。
コメント
太陽光を推進する人の分析があまりにも甘すぎるというのが一番大きな問題のような気がします。
本文に提示されている木走正水氏の『太陽光発電は「積分値」ではなく「微分値」で見ると有益性が見えてくる』に関しても、肝心の太陽光は1年の間どれだけの発電をするのかの推移や、1日にどれだけの発電をするのかの推移(夏、冬、晴れ、曇り、雨)などの分析はただの1つもされていません。
おそらくちょっと賢い高校生をつれてくれば、もうちょっとましな分析をすると思います。その程度の分析しかしていないのです。
そんなもの賛成したくはありません。
確かTPP反対、米作を守れ、の頃って、「水田で治水」「環境の保護」「安全な食文化を守れ」がだったと記憶してますが、「休作地に太陽光パネル」って、農家、JAがいつからokになったのでしょうか?
揚水発電にしても、世論はダム建設反対だったですよね、無駄な公共事業で地震で決壊するから危ないとか。
「鬼畜米英」で竹槍持って振り回していた手が突然「ギブミーチョコ」で広げられているようで、気持ちよくないです。
ついでで、しつこくTVで水田を油藻畑にと言っていますが、間違うとまさに環境破壊そのものではないかと思います。食物連鎖の生態系に組み込まれた後で例えば発がん性が判明した場合、ブラックバスですら退治できない人間が、本当に封じ込められるのか??globalに広まったらどうするのか??非常に疑問です。
太陽光発電がどうしてもしたいのであれば、赤道付近でするのが筋で、高緯度でするのは基本的に非効率と考えます。
ここでも又、太陽光発電に関する、誤解が主張されていますね。太陽光は、確かにピーク電力を穴埋めするには良いのですが、それには、確かなベース電力が安定的に存在して、はいじめて成立するという原理が見逃されています。
管総理は、20%を自然エネルギーでと国際公約してきましたが、そうだとしても、問題は、残りの80%をなんで賄うか。
それが問題なのです。
原子力は当面無理ですね。無理矢理原子力を復活させたいと言う論もありますが、先ず難しいと思います。
何故なら、最早原子力には、絶対の安全を求められることは明らかだからです。
然もどんな説得に対しても、説得できないほどに、信用を無くしてしまいました。
全エネルギーの80%を如何にするかの論議無くして、太陽光発電を幾ら賞賛したところで、なんの問題解決にもならないことは明らかです。
所詮、メガソーラーなど素人のお遊びの領域なのです。
識者のきちんとした論議を求める所以です。