ドッグイヤーと言われるくらい進歩が早いIT業界でも、何十年も前の技術であるメールは今でも根強く残っている。しかし、これまで使われていたメールもそろそろ終幕を迎えるかもしれない。
メールというのはIT業界のものだけではなく、どの業界でも業務に必要なツールであり、個人レベルで見ても必須ツールである。このことがメールを今まで存在させた理由であることは間違いないが、やはり、枯れた技術というものは安定感やいざという時に応用がきく点などもメールを延命させた理由だろう。それ以前に、ITのリーダー達はだれもメールをやめようと大きな声で言わなかった。では、メールは今も昔と変わらず利用されているかと言うとそうではない。簡単なメッセージのやりとりなどではメールを使わず、TwitterのダイレクトメールやFacebook、Skypeなどのチャットで無意識のうちに代用する人が増えてきた。
つまり、だれも声に出さないが、じわじわとメールの終わりは近付いてきています。そして近い将来、突然終わりが来るであろう。メールに引導を渡すのは必ずしも一人ではないが、ベンチャー企業やスタートアップではなさそうだ。例えば、インターネット電話では不動の地位を築いているSkypeに勇敢に立ち向かおうとするViberは音声通話の質が良いだけでなく、テキストメッセージも優れているので、可能性はありそう。また国内では「メールの時代は終わりました」と謳うChatWorkもある。ビジネスユース向けに最適された機能性とシンプルさを備え、世界展開も行っているので将来性にも期待ができそうだ。これらのサービスはすでに完成度が高く、顧客数を急激に増やしているが、メール終息の決め手となることはないだろう。
その理由はまず、古くからの習慣を変えるには強力な企業力と動員人数が必要となるからだ。世界中で利用されているメールを止めるには、現時点で少なくとも数千万人以上の顧客がいる企業でなければならない。そして、その企業がハッキリとしたメール終息への方向性を示せることが条件となる。また、メールやメッセージは水や電気ほどとは言わないものの重要なインフラだ。業務の要となるメールを預けるほど信用ができる実績やバックボーンを持っている企業でないと安心して業務をすることができない。
では、具体的にどういった企業に期待がかけられるのかを述べていきたい。まずTwitterは良さそうだが、限定された会員同士でしかプライベートなメッセージの送受信ができないためメールの代替えにはならない。またTwitterはそのサービスの目的からこれが変更される可能性は極めて低い。
Appleは今メッセージサービスを持っていないが、年内に登場するモバイル用の新OSでは、新OS間に限定されるもののビデオ、テキスト、写真、グループ・メッセージを送受信できるようになる。端末の数は4000万ほどなので後に述べるFacebookに数では敵わないが、今までの習慣を変えるのが得意なAppleだけに期待ができる。
Facebookは現段階で最も可能性がある企業だ。全世界に7億5千万人の会員を抱えたSNSを運営しているのはもちろん、すでに会員同士が使えるメッセージサービスに全会員が持っているFacebookからもらったメールアドレスを利用すると会員以外ともメッセージサービスが使えるのが決定的だ。
GoogleはGmailという優れたウェブメールサービスを持っているのでメールの根絶には興味がなさそうに見えるがそうではない。先月末から開始されたGoogle+というサービスがこの鍵を握っている。Google+はその名前のとおり、SNSだけを意味しているのではなく、Googleが今持っているサービスを統合し向上させるプロジェクトだ。すでに、ブログサービスのBloggerや写真整理サービスのPicasaもGoogle+に統合されることが決まっている。その流れか、GmailもGoogle+に統合されるとGmail担当エンジニアリング・マネージャーが公言している。これは、古風なメールサービスの終了を目指すものだろう。ただ、どのように統合されるかがまだ明確にされておらず、予想しにくいところだが、おそらく今までGoogleがやってきたすべてをウェブブラウザに引っ張る方法ではなく逆に、Outlookなどのメールクライアントに自ら入り込みOutlookでGoogle+のサービスが使えるような状態を作るのかもしれない。
どちらにしても、三社ともメールを終わらせるなどと大風呂敷を広げてはいないが、メッセージサービスの覇権争いで気がつけばメールは歴史になっているだろう。
サイトM&Aコンサルタント 阪上健生
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