厚生労働省は11日、厚生年金支給年齢の65歳への引き上げを4年前倒しする案を発表した。さらに年金支給年齢を70歳程度まで引き上げることを鋭意検討している。筆者はこれは大変素晴らしい案だと考えている。なぜなら年間100兆円にも達する日本の社会保障費の抑制は喫緊の課題であり、日本の財政問題とは要するに膨張する社会保障費をどうするか、という問題に尽きるからである。この解決策はふたつしかなく、それは税金や保険料などの負担を増やすか、年金などの給付を減らすか、である。支給年齢の引き上げは、給付を減らすことに相当するが、心理的、政治的には給付額を減らすよりはるかに容易であり、筆者は政府が行動経済学
日本の社会保障費の推移
出所: 「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」藤沢数希(ダイヤモンド社)
そもそも世界の先進国の平均寿命は伸び続け、また出生率は減り続けたのだから、遅かれ早かれ年金制度が破綻することは火を見るより明らかなのだ。せめて平均寿命の伸びにあわせて年金支給年齢の引き上げを実施するのは極めて理にかなっている。それだけではない。
筆者は先進国の多くの人々が怠惰で、夢も希望もない生活を送っていることを常々憂いている。親の家に住み、アルバイトで多少のお金を稼ぎ、牛丼などの安い食事ですませ、恋人を作ることなどすっかりあきらめ、くだらないテレビ番組を見たり、インターネット上の無料の娯楽やポルノで無為な時間を過ごしているような人たちがなんと多いことだろう。そして本人たちはそのことを悪いこととも思っていない。筆者は、そういった人たちにも、社会のために働き、少しでも社会をよくする生産活動に参加してほしいと強く思っている。彼ら、彼女たちは、とにかく怠ける機会があればすぐに怠ける人たちなので、そんな人たちに早々と年金を支給してもいいことは何もない。そこで解決策は、とにかく働かなければいけない状況、社会に貢献しなければいけないような環境を作り出すことだ。
年金支給年齢を引き上げれば、それまでお金がなければ野垂れ死ぬより他ないのだから、十分な蓄えのな人たちは働くことになるだろう。彼ら、彼女たち一人ひとりが、年金支給年齢を引き上げることにより、より長く働かざるをえない状況になる。これはいうまでもなくGDPを引き上げ、日本、そして世界をより豊かにしていくはずだ。そして何より彼ら、彼女たちに生きがいを与え、人生を豊かにするにちがいない。つまり年金支給年齢の引き上げは、日本国民に希望を与える政策なのだ。
また、筆者は政府の案をさらに一歩すすめて、もうひとつ提案したい。それは男女の平均寿命の違いを考慮することだ。厚生労働省によれば、日本人女性の平均寿命は86.4歳で26年間連続で世界一である。日本人男性の平均寿命は76.4歳で世界第4位だ。つまり年金支給年齢を男性と女性で10年ほど差をつけることが合理的なのだ。男性の年金支給年齢を70歳、女性の年金支給年齢を80歳程度に引き上げたい。女性は若い頃は男性にいつもおごってもらったりして、何かと得することが多いので、この程度の支給年齢の違いは問題にならないだろう。これで日本の財政問題など一気に解決する。