2011年を象徴する、米海軍横須賀基地の44本のクリスマスツリー

石川 貴善

日本ではちょうどクリスマスを迎えています。

この写真は12月4日に米海軍横須賀基地の招待を受けて、撮影した44本のクリスマスツリーとそのイベントの模様です。クリスマスツリーは米海軍の艦船・司令部・学校・病院のほか、同じ敷地内に一部の施設を持つ海上自衛隊のものも飾られています。
アメリカではツリーに飾り付けを行い、ツリーを見ながらクッキーなどお菓子を食べる風習があります。筆者も同様にして時間を過ごしましたが、こうして飾り付けを見ると、色々なことの象徴する1年でもありました。


・地震・津波・メルトダウン・電力不足など、危機管理のあり方が問われる年でした。

・福島の原発事故に伴い、空母ジョージ・ワシントンは一時的に佐世保へ退避し、横須賀基地から真水を積んだバージが2隻、炉心冷却のために福島原発に運ばれていきました。

・このツリーに出ている子供たちや家族などの軍属の希望者は、原発事故に伴い3月から4月にかけ西海岸に自主避難をしていました。

・ケビン・メア氏の発言や普天間移設の問題などでこじれていますが、”オペレーション・トモダチ”・”南西諸島の防衛”・”次期戦闘機選定”など、日米の防衛協力や一体化の進んだ年でした。

・お札の飾り付けがありますがドルやユーロの信認が低下し、日本に限らず世界経済においても厳しい年でした。

・リスクを避けようとして、新たなリスクに直面した年でした。資金をユーロに退避させた矢先でのユーロ危機・円高と電力不足を理由に海外に生産拠点を移転強化しても、タイの大洪水による被害が象徴しています。

・米軍の横須賀海軍病院の医師や看護婦がアフガニスタンに行ったことを示すツリーがあります。イラク戦争で米陸軍は撤兵しましたが、アフガニスタンでは海軍・空軍・海兵隊が未だに駐留して未だに先の見えない戦いをしています。

・東アジアの平和と安定が再度問われる状況です。中国では景気が急激に冷え込み、ロシアではソ連崩壊から20年を迎えているなか、急に飛び込んだ金正日総書記死去に伴い、先行き不透明な状況になっています。

・進まない復興・遅滞する決め事など、今まで停滞していた日本社会の凋落の兆しが顕著となっています。

・同時に「坂の上の雲」のように過去への憧憬や、税と社会保障の財源やエネルギー問題などで迷いが見られる年でもあります。

・この展示の際に、大手紙支局や地方紙による複数の記者が取材に来ていました。広報に聞き込むわけでもなく、その場に居合わせるアメリカ人に英語で話しかけるわけでもなく、くつろぐわけでもなく、たまたま居た日本人に多少話をして、足早に去る宙ぶらりんな状況は、今のメディアを象徴しています。

ちょうど寒波が来ていますが、心身ともに寒い冬を迎えている被災地の方も、企業の倒産・人員削減などで厳しい局面を迎えている方も、また会社で働いていても少ない人員で激務にさらされる方にも、クリスマスやお正月は等しく迎えます。年明け以降どのような動向になるかは分かりませんが、読者の皆様には心配事よりも英気を養う時期になることを願って止みません。

写真1)東日本大震災の米軍支援(筆者撮影)

写真2)基地内の小学校(筆者撮影)

写真3)円高ドル安を象徴する飾付け(筆者撮影)

写真4)アフガニスタンで働く米海軍横須賀病院の中尉(筆者撮影)

────────────────────────────────────