NHKが「65歳雇用義務化 法案提出へ」と報じている。
企業は、必要なら70才でも雇用を継続すべきだし、40代でも、不要と判断すれば馘首すべき、というのが私の基本的な考えである。企業の決算に、責任を負えない政府が決して口出しすべきではない。
40代での馘首に就いては、最近の司法判断、「「戦力外」直ちに違法とはならず 退職勧奨巡り東京地裁」が潮目の変化を示している。
それでは、65歳雇用義務化を強行すれば、一体どの様なしっぺ返しが来ると言うのであろうか?
先ず、第一に考えられるのが、それでなくても、円高と電力料金の値上げで、国内立地に嫌気がさしている製造業が、海外移転を加速する事である。
結果、雇用の延長を目指して、雇用の消失を達成するという皮肉な話となる。この犠牲となって、若者、中年の職が奪われるのは、当然の結果である。
今一つは、企業の総人件費は一定である事という冷徹な事実である。結果、60歳以上の新たな人件費増に対し、若年層の人件費削減で対応するしかない。
ここで認識すべきは、昨日の記事、「日本型雇用の解体を確信」で説明した通り、今後、多くの社員の年俸は、役職によって上限が決定してしまうという厳しい現実である。個人的には、年俸400万円程度で固定と言うのが一般的になると思う。
そして、65歳雇用義務化によって生じる新たな人件費の原資は、人数の最も多い、この層の年俸削減で捻出する事になると予測する。
露骨に言ってしまえば、決して裕福とは言えない、若年層のポケットに政府が無理やり手を突っ込み、金を鷲掴みにして獲得した金を60歳以上に再配分するというだけの話ではないだろうか?
消費税率と電気料金が上がれば、当然生活は今迄より苦しくなる。そして、追い打ちをかけるが如くの賃下げである。
子育て中の若い夫婦に取っては、誠に以て血も涙もない非情な政府政策と言わざるを得ない。又、子供は欲しいが、経済的な理由で諦めるカップルも増えると思う。結果、少子化は更に拍車がかかる事になる。
実質、破綻している年金システム延命の為に、若年層を生贄に差し出す様な下品極まりない政策はあってはならない。
同時に、票乞食に過ぎない国会議員が、老人層に対し、千切れんばかりに尻尾を振り続ける今日の状態も異常であり、放置すべきではない。
その為には、殆ど納税していない、一定年齢以上の老人の公民権見直しを検討すべき時期に来ているのではないだろうか?
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役