翼賛体制で始まる「新たな戦前」

池田 信夫

きょうから始まる国会の最大の焦点は、いうまでもなく消費税だ。岡田副総理は「10%では足りない」と発言して党内で論議を呼んでいるそうだが、その理由は朝日新聞によれば「今の制度でも2015年以降、新たな財源が必要になる。さらに年金制度の抜本改革を実施すれば最低保障年金があるから、財源はそれ以上に必要になる」からだという。


財政危機に陥った国は多いが、それを再建するときは増税と社会保障の削減を行なうのが普通だ。あのギリシャやイタリアでさえ年金を減額したのに、政府債務が1000兆円を超える日本で年金を増額する民主党は、崖っぷちに向かって走る車のアクセルをふかしているようなものだ。

これに対して自民党は「マニフェスト違反だ」などと手続き論をいうばかりで、財政再建の道筋を示せない。公明党も「社会保障の全体像を示せ」というだけで、みんなの党でさえ「現在の年金支給額は維持する」と公約し、社会保障の削減が国会で論議にもならない現状は、与野党の翼賛体制で戦争に突っ込んでいった戦前を思わせる。


彼らが楽観しているのは、長期金利が1%前後で国債が順調に消化されているからだろうが、図のようにギリシャの長期金利が5%から35%になるのに2年もかかっていない。上がり始めたら終わりだ。かりに当分は破綻が来ないとしても、鈴木亘氏も指摘するように、今年生まれた子供は1人3900万円の支払い超過になる。この世界に例を見ない世代間格差をマスコミさえ報じないのも戦前に似てきた。

50歳以上が有権者の過半数になった日本は、老人独裁国家になりつつある。「今までうまく行ったんだから、これからも行くはずだ」という主観主義が軍部を増長させ、それに迎合するマスコミが「空気」を醸成して、政府に開戦を決定させたのだ。その根拠は東條英機もいったように「やってみなければわからん」。確かにやってみなければわからないが、やってみてわかったらどうするのだろうか・・・