TOEFLアライアンス - 世界で戦える日本人を創る --- 伊藤 ひろたか

アゴラ編集部

今、アジアに行くと韓国人がとにかく元気だと聞きます。一方、日本人はいい人なんだけど、存在感がないというのが一般的な評価。存在感がないのは当たり前で、どうしても日本人同士でかたまってしまうから。色々と要因はあるのでしょうけど、語学力のなさが自信のなさにつながっているのでしょう。

この辺の事情を変えなければいけない、語学力さえ手に入れれば、日本人は十分に実力もあるし、もう一度世界で戦えると訴え続けているのが府立和泉高校の中原徹校長です(国際弁護士から民間人校長になったワケ(前編)世界で堂々とできる日本人を創りたい)。中原校長は国際弁護士としてハリウッドで大活躍していた方ですが、海の向こうから日本を見た時に、年々、力を失っていく様に危機感を覚えて日本に戻って来た方です。今をときめく、橋下市長の大学時代の友人でもあります。


中原校長がかねてより主張していた世界で戦える日本人を創るための第一歩がいよいよ始まります。それがTOEFLアライアンス。TOEFLアライアンスとは、高校の英語カリキュラムにTOEFLを組み込むことで、「読む・書く・聴く・話す」の四つの力を身に付け、高校卒業と同時に海外に出る切符を手に入れようというものです。高校卒業時にスコア80を獲得するという非常に意欲的な取り組みです。

TOEFLアライアンスは二つの点で全国初の取り組みになります。一つは県を超えて公立高校がカリキュラムの開発を手がけること。もう一つはTOEFLを英語カリキュラムに採用したこと。TOEFLアライアンスへの参加校は大阪府立住吉高等学校、同府立三国丘高等学校、同府立和泉高校、新潟県立国際情報高等学校、そして横浜からは横浜市立サイエンスフロンティア高等学校。大阪と新潟、そして横浜の高校、それも各地域の上位校が参加します。

今回のTOEFLアライアンスが実現した背景は国際社会における日本人の存在感の低下。1990年代後半以降、アジア諸国が急速に語学力を身に付け、日本だけが置いてけぼりになっていることへの危機感です。語学力のなさが日本人のメンタリティの弱さをより際立たせていると、国際弁護士としてアメリカで活躍していた中原校長は喝破します。なぜ、アジア諸国が語学力を手にしたかといえば、韓国がその代表国ですが、通貨危機でした。外に打って出ていく以外に国が成り立っていかない。サムスンの急進撃が始まったのもIMF以降です。

今の日本はゆでがえるのようです。世界で戦える日本人を創っていく以外に活路はないわけですが、まだ、これまでの延長で何とかなるのではないかと考える人の方が多いのが現実です。中原校長の存在を知り、私もかねてより英語教育をはじめ、日本における教育環境の改革について意見交換をしてきました。昨年の夏にはTOEFLアライアンスを始めたいというお話も伺い、私のホームページでもご紹介させて頂きました(国際弁護士から民間人校長になったワケ – リーダーの英語、コミュニケーションの英語)。授業のすべてが英語で実施される、秋田の国際教養大学がなぜ、この不況下において就職率100%なのか。同大学の卒業生が使える英語を身に付けているからに他なりません。

大学に入ってから使える英語を勉強するくらいなら、高校生のうちから使える英語を身に付けてしまおうというのがTOEFLアライアンスの狙いです。この勉強そのものが日本の大学受験にも直結しますので、何かを犠牲にする必要がありません。高校卒業と同時に、望めば海外に留学できる切符を手に入れてしまおうという意欲的な取り組みです。一校だけで取り組むともしかしたら、挫折してしまうかもしれない。しかし、同じ問題意識を共有できる学校が集まって先生同士が教材や授業方法を切磋琢磨し、生徒も学校を超えて切磋琢磨していくことで、いい競争が生まれるはずです。

横浜から、大阪から、新潟から、世界で戦える日本人が陸続として誕生する日はそこまで来ています。

伊藤 大貴(Hirotaka ITO)
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