グリー、DeNAといったソーシャルゲーム産業がこの1年ぐらいでは日本の中では最も元気のある業界の一つに育ってきました。実際、このところの株式市場の取引売買代金でみればグリーは日本のトップクラスであります。日本の産業が常に新陳代謝を繰り返しているとすれば明らかにソーシャルゲーム業界は今、一番旬であります。
ところが、規制という暗雲がこの業界に漂ってきています。課金アイテムを購入する為の「使いすぎ」、これが各方面から青少年の育成上、良くないという声が上がり、昨日においてはパチンコ業界並みの規制導入が議論されたようです。
グリーはこの辺に関して監督官庁と調整を進めながらうまくやっているという印象があります。特に青少年の使いすぎ問題に関しては先週、一定年齢までは一定金額に課金アイテムの購入を規制するという自社ルールを発表したところです。
グリーの田中社長は私が見ている限り、非常にうまい立ち回りをしてきていると思っています。彼の野心はソーシャルゲームを通じて世界で10億人規模にすること。DeNAも同様で両者は傍目には訴訟を含む泥仕合をしているように見えますが、私には良きライバルであり共に野心があり思わず応援したくなります。
日本は何か問題があるとすぐにお国が上から押さえつけるという策に出ます。この結果、伸び盛りの業種の成長が鈍化したり、業種によっては崩壊を招くこともあるのです。規制が崩壊を招いた好例としては消費者金融業界が典型だったと思います。
海外から見ているとここがとても不思議であります。日本の規制は型にはめてそれ以上増やせない、伸ばせないようにする仕組みですが、本来、監督官庁は良きを伸ばし悪しきを押さえ込むという両面をバランスさせなくてはいけません。ところが日本の規制は「規制すれば役人は文句を言われない」という姿勢にしか見えません。
これはお役人が思考を止めて、「国民から言われたことを分かりました、では、制限をします」といっているようなものなのです。例えばケアプロという簡易検診をしている会社があります。この簡易検診に於いて採血するのに現行の医療法では医師が指示しなければ採血できません。ワンコイン検診をモットーにしているこの会社は合法的に受診者が自分で指から採血する方法を編み出しました。ところが保健所はその検査キットを売っているメーカーを締め上げ、ケアプロがキットを仕入れられないようするのです。役所の発想とは思えません。
日本は韓国に先を越された業種がたくさんあります。中国はその国内市場を利用し、日本を追い上げます。日本企業は円高に喘ぎながらさまざまなアイディアを出し、市場に投入しますが、役所がブレーキを踏みその芽を摘んでいきます。
80年代に日本の自動車がアメリカで売れすぎて業界が自主規制なるものを行いました。自分達でここまでしか売らない、という枠をはめるわけで奇妙な響きですが、政府が絡まなかった分、うまく乗り越えられたともいえるのです。
日本が世界の中で霞んできたとしたらそれはお役所の何かあれば規制という姿勢に大いに理由があるように思えます。規制ではなく、どうやったら使いすぎを防ぎながら業界が活性化するかそれが思いつかないなら役所の存在義はないと思います。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年3月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。