欧州の若年層失業率の発散から見るユーロの崩壊

藤沢 数希

日本では新卒の内定率が落ちており、就職氷河期などと言われて久しいが、世界の若年層は日本の学生よりはるかに厳しい状況になっている。特に欧州で財政破綻の危機に瀕している、ギリシャ、スペインなどでは、25歳未満の若年層の失業率はなんと50%を突破いているのだ。実をいうと、筆者は最近、世界の若年層の失業率を調査していて、今日は雇用問題についてコラムを書こうと思っていた。しかし、ヨーロッパの各国の若年層失業率のデータを見ていたら、ユーロという通貨の崩壊がありえるのじゃないか、という恐怖を覚えた。よって、今回はユーロ危機について論考を書きたいと思う。

欧州の25歳未満の失業率

出所: Eurostat、Google Public Data


拙著『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』にも詳しく書いたが、ユーロ圏の問題は、各国が主権国家として財政政策、つまり国債を発行して資金を調達し、その資金を公共事業や社会福祉などに使うことはバラバラにできるのに、通貨の金利を決める金融政策はユーロ圏で全て同じになってしまうことである。そして単一通貨なので当然、各国の経済環境の違いが為替レートの変動で調整される、ということがない。これが単一通貨ユーロの問題点である、というのはユーロがはじまる以前からさまざまな経済学者により指摘されてきたことであるが、米国の不動産バブル崩壊に端を発する世界同時金融危機、そしてその後のギリシャ・ショックなどで、ユーロの構造的問題が一気に露呈した。

金融政策は簡単にいうと、景気がいい時はバブルの生成を防ぐために金利を引き上げて人々がお金を借りにくくし、逆に景気が悪い時は金利を引き下げて人々がお金を借りやすくすることである。現在の欧州は、ユーロ安で輸出産業が好調なドイツには金利が低すぎて、逆に、バブルが崩壊し経済が低迷しているギリシャ、スペイン、イタリアなどでは金利が高すぎるのである。そしてユーロの水準であるが、これはドイツには安すぎ、ギリシャ、スペイン、イタリアなどには高すぎるのだ。よって、ドイツの輸出産業はバブル気味であるが、経済の弱い地中海の国々の産業は非常に厳しい状況になっている。

筆者は、こういったことは頭では理解していたが、それでもユーロという通貨が崩壊する、というのはいささか大げさであると考えていたし、欧州の人々の実際の生活がどうなるのか、までは想像力が働かなかった。しかし、ギリシャやスペインの若年層失業率が発散し、ドイツのそれは依然として低水準に留まるどころか、改善さえしている状況をこうやってチャートにしてみると、ユーロ危機というのは、欧州の人々の生活を確実に破壊していっている、ということがよく分かる。

今週末は、フランスの大統領選、そしてギリシャの総選挙が行われる。欧州経済から目が離せない。