ソフトバンクのスマートメーター構想

池田 信夫

きのうツイッターで東電のスマートメーターに対するソフトバンクのパブリックコメントを紹介したら大反響だった。電力自由化やスマートメーターがよくわからない人にもわかるようにやさしく書いてあるので、ちょっと紹介しておこう。


前半は家庭用(低圧)の自由化と発送電分離を行なうべきだという電力自由化論で、これは筋論としてはわかるが、今週のGEPRにも書いたように、新規参入がないまま料金を自由化すると、家庭用の電気代は上げ放題になる。発送電分離も、電力品質の厳格な管理の必要な電力は通信よりむずかしい。

後半のスマートメーターの部分は、とてもよく書けている。特に東電が今から検針情報を送るために光ファイバー(!)を引いて「マルチホップ」という東電専用の無線ネットワークをつくろうとしているのは、反競争的であるばかりでなく高コストだ。東電の「親会社」である原子力賠償支援機構にとっても、携帯電話業者に頼めばいいインフラに4000億円(ソフトバンク試算)も投入することは許せないだろう。

上の図に描いてあるように、電力情報のための通信網をこれからつくる必要なんかなく、通信業者のネットワークを使えばいいのだ。それによって東電の設備投資が節約できるだけでなく、携帯電話業者は「マシンtoマシン」の新しいネットワークが構築でき、通信ベンダーには1700万世帯の新しい市場が生まれる。電力消費を自動制御する「インテリジェント家電」で、青息吐息の家電メーカーも息を吹き返すかも知れない。

世界的にはこの分野はまだ発展途上で、日本の技術水準は高いので、今のうちにオープン・スタンダードを世界に売り込めば主導権を握れる可能性もある――というわけで、今月ソフトバンクなどと一緒に「IOTコンソーシャム」というNPOを立ち上げる予定だ。IOTというのはInternet of Things。まだ海のものとも山のものともつかないが、そういうときが大事だ。もしかするとPCやインターネットが生まれたときのような「キラー・アプ」が見つかるかもしれない。

今夜10時からのニコニコ生放送では、村上憲郎さん・澤昭裕さん・竹内純子さんとともに、スマートメーターや電力自由化について考える。