26日、消費税増税法案が、衆院本会議で、民主・自民・公明の3党、国民新党などの賛成多数で可決された。賛成は363票、反対は96票だった。まだ、参院での法案通過は決まったわけではないが、日本の国家財政の正常化へ向けて、一歩前進した。順調に行けば、2014年4月に消費税率は8%に、2015年10月には10%に引き上げられる。筆者は、所得税の累進性の緩和、法人税率の引き下げ、そして、消費税率アップは、日本の税制を正すために重要
しかし、すでにこの程度の消費税率の引き上げでは手遅れという意見もある。実は、日本の財政破綻、具体的には日本国債がある日突然暴落する可能性であるが、第一に日本の銀行の行動次第であるといえる。我が国最大のメガバンクである三菱UFJフィナンシャル・グループは、すでに日本国債の保有残高が約49兆円に達し、企業への貸し出し残高の約46兆円を上回っている。他の邦銀も状況は似たり寄ったりであり、日本の銀行は日本国債をロングすることが本業になってしまった。
三菱UFJは、2012年3月期決算で9813億円の利益を上げ、日本の全上場企業の中で最高の利益を叩き出した。比較的に安全であると思われている日本円が買われ、世界的に景気が低迷し金利が低下したため、日本国債が大きく値上がりしたからである。三井住友やみずほも記録的な利益を上げて、10年以上納めていなかった法人税を、めでたく日本国政府に納めた。土地バブル崩壊による不良債権処理をしてから、この損失を繰り越せたので、ずっと法人税を払わなくてもよかったのだ。10年以上も法人税ゼロとは、日本の大手金融機関にとって、日本はまさにタックスヘイブンだったのだ。これではケイマンや香港も面目丸潰れだ。
日本国債が暴落するかどうかは、一にも二にも、これら邦銀が国債を買い続けるかどうかにかかっている。そして筆者は、買い続ける、と考えている。邦銀が国債を買うのは、他に貸し出し先がないからであり、経済の低迷が続く日本で、それがこれから急に変わるとは思えない。また、邦銀にお金を預けている日本の高齢者が、急に預金を引き出して、海外に投資し始めるとも思えない。高齢者の預金は、やがて相続されるのだが、日本では、80歳、90歳のお年寄りが亡くなり、60歳、70歳の「子ども」に遺産が相続されているのである。60歳、70歳の子どもたちが、急に投資行動を変えるようには思えない。そして、邦銀が、集めた預金で国債を買う、というこのお気楽なビジネスモデルをやめるとも思えない。
こうして日本では、これから伸びる産業に資金を供給するという金融本来の役割を誰も果たさないまま、失われた10年は、20年となり、日本国政府が1000兆円にもなる借金を積み上げたのだ。この構造が変わらない限り、さらに経済の停滞が続いていくだろう。しかし、経済が停滞し、資金需要が乏しいからこそ、日本は財政破綻しないのだ。消費税率のアップは、財政の健全化に僅かではあるが貢献し、消費が抑えこまれて景気も低迷するので、金利もさらに下がるだろう。日本の財政は、良くも悪くも、破綻しにくい構造になっている。こうして政府債務が積み上がり、経済が低迷を続けるという、堂々巡りは続く。邦銀が、日本国債と心中するその日まで。