低迷する外資系証券会社の報酬額

藤沢 数希

かつては、有名大学卒業生の最優秀層にとって、極めて人気の高かった外資系証券会社であるが、2008年のリーマン・ショック以降、人気が衰えて来たようだ。日本企業からも内定を得た学生が、外資系証券会社の内定を辞退するケースが頻繁に見られるようになって来た。度重なるリストラに加え、その報酬額が大幅に下がって来たのが原因だと思われる。

以下は、外資系証券会社の最大手のひとつであるゴールドマン・サックス証券の社員の平均年収を、アニュアル・レポートから計算したものである。他の外資系証券会社も、概ね似たような給与水準であると思われる。


サブプライム住宅ローン市場が崩壊して、巨大バブルが崩壊する直前の2007年には、社員一人当たりの報酬が7000万円を超えていた。これはバックオフィスやITなど、比較的給与の低い部署全てを含んだ金額である。

しかし、2011年にはこれが3000万円弱まで低下してしまった。ひとつの理由はCEOなどトップマネジメントの報酬は以前は50億円ほどだったが、それが監督当局の強いプレッシャーにより数億円程度まで押し下げられてしまったからだ。セールスやトレーダーなどのフロント・オフィス社員の給与水準は、さすがに半分は下がっておらず、おそらく30%~40%ほどのダウンに留まっていると思われる。

今後はバーゼルIIIによる自己資本規制の強化など、法規制が厳しくなる。それゆえに、かつてのような大きな成功報酬は見込めず、比較的に低目だが安定した年収水準に収まる可能性が高い。外資系証券会社は、リストラが一巡した後は、平均年収が2000万円~3000万円程度の、安定しているが退屈な仕事になる、というのが筆者のもっぱらの予測だ。たまたま儲けた平トレーダーに、何億円もボーナスを払いたいと思う、証券会社のステークホルダーはいなくなったようである。