ところが、この記事は「西日本全体では900万キロワット以上の電力が余っていたので、ほかの電力会社から関電に電力を送る融通をすればしのげた」というが、これは植田和弘氏の推測にすぎない。この図をどう読めば、900万kWも余っているのだろうか。
私の記事に引用した図を見ればわかるように、関電の供給能力2542万kWには「他社融通」644万kWが含まれている。それを超えて融通してもらえるかどうかは、相手がOKしないとわからない。「900万kW余っているから足りる」というのは「貯金がなくなっても他人の家には金が余っているから大丈夫」というようなものだ。
お笑いなのは、宮武嶺こと徳岡宏一朗という弁護士のブログ記事だ。「火力発電所の余力が384万キロワットもあった」というのは7月6日の話で、彼の引用している赤旗にも書いてあるように、9日の需要は2080万kW。まだ供給に余裕があるから、固定出力の原発を動かして火力を止めたのだ。ピークの8月3日は前述のように2682万kWだから、火力をフル稼働しても足りない。弁護士というのは、こんな簡単な算数ができなくてもつとまるのだろうか。
いずれにせよ問題はこういう空想的な数字遊びではなく、リアルな日本経済の損失だ。今年上半期の貿易赤字は、2兆9000億円と史上最悪になった。この最大の原因はLNGの輸入が昨年より49%も増えたことで、その輸入額がほぼ貿易赤字に相当する。このコストは最終的には電気代に転嫁されるので、富士通総研の推定によれば、原発停止でGDPが0.9%低下する。
国民がこうした社会的コストを理解した上で「安心のためにはGDPが減っても電気代が上がってもかまわない」というなら、それは一つの選択だ。しかしそのコストを隠して「電力は足りる」というプロパガンダを流す朝日新聞や左翼弁護士は、自分たちが「正義の味方」を演じるコストをすべての国民に負担させるフリーライダーである。彼らが毎年4兆円以上のコストを負担するなら何をいうのも自由だが、私は彼らの引き上げる電気代を負担するのはごめんだ。